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し、国籍の確認があった場合には、旗国の取り締まりを要求し、旗国が実際上直ちに取り締まることが困難であることを見越して、旗国から取り締まりの許可を引き出すという方法をとることが多い。こうした方法がとられる背景には、アメリカの国内法としての「公海マリファナ規制法」(1980年)によって、「合衆国の船舶上」および「公海上において合衆国の管轄に服する船舶上」における法違反行為について、それがアメリカに向けて輸送中であるか否かを問わずに立法管轄権を適用しており、しかも「合衆国の管轄に服する船舶」には、合衆国の関税水域にある船舶のほか、「無国籍船」または1958年の公海条約6条2項により「無国籍船とみなされる船舶」が含まれていたこと(20)、さらに続く「新薬物濫用規制法」(1986年)により、「公海上」という場所的限定をはずした上で、「合衆国の管轄に服する船舶」の範囲をさらに広げて、外国船舶であってもその旗国が合衆国法令の執行に同意しあるいは異議申し立て権を放棄した場合、さらに他国の領海内にある船舶であっても沿岸国が合衆国の法令の執行に同意を与えた場合について、立法管轄権を適用することとした(21)という事情がある。
しかも実際の取り締まりにあたる沿岸警備隊(coast guard)には、令状なくして強制措置をとりうる場合として、急迫した事情がある場合、行政的措置をとる場合のほか、国境地帯捜索(boarder search)が含まれることが判例上確立し、この国境地帯には、現実の国境地帯のみならず「機能的にこれと同視できる地点」を含むものと解されていたから、少なくともアメリカに持ち込むことを目的としている限り、必要に応じて12カイリの関税水域はもちろん、場合によっては関税水域を超えた水域においても適用可能であったという事情がある。さらに沿岸警備隊の任務として「公海上及び合衆国の管轄に服する水域において、連邦法の違反を予防し、発見し及び鎮圧するために、質問、調査、検査、捜索、押収及び逮捕を行うことができる」(22)と規定されていることにより、沿岸警備隊には連邦法の立法管轄が及ぶ限りで、公海上を含めて、広く法令執行の権限を与えられている。こうして内国法令上の立法管轄と執行管轄とが一体となって、内国法益保護の実効を高めようとする努力が払われている。こうした措置がどこまで国際法上容認されるかには疑問の余地もあるが、アメリカは国際法上の

 

 

 

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