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船舶並びに乗船者及び積み荷についての適当な措置を許可できるものとしている(同条4項)。この規定では海域が特定されていないが、これは交渉過程において他国の排他的経済水域内における取り締まりに関して意見の対立があったためである(19)。いずれにしても少なくとも公海における措置が定められていることは間違いない。

海洋法条約108条1項の国際協力との関係では、国連麻薬新条約は「海洋法に関する国際法により、海上における不正取り引きを防止するため、可能な最大限度の協力をおこなう」(17条1項)と規定して、国際協力がそれぞれの国家の国内法制上可能な範囲でなされればよいことを明らかにしている。また108条2項の自国の旗を掲げる船舶について、これが不正取り引きに用いられることを防止するにあたっての旗国による援助要請に関しては、援助の要請を受けた国は「用いることのできる手段の範囲内で援助を行う」(同条2項二文)とされており、事実上も法律上も援助要請を受けた国の裁量が広く認められている。旗国以外の国の措置に関しては海洋法条約に規定がないが、国連麻薬新条約では旗国の許可を得ることが条件とされている。しかし、その措置の中身・限度については、一定の例示があるものの、詳細は旗国との間の二国間の条約、協定または取極(同条4項)あるいは個別に旗国が合意する条件(同条6項)に委ねている。なお旗国以外の国がとる措置については、それが「海洋に関する国際法に基づく沿岸国の権利及び義務並びに裁判権の行使を妨げ又はこれらに影響を及ぼすことのないよう妥当な考慮を払う」(同条11項)と規定されており、他の国の接続水域あるいは排他的経済水域において第三国が措置をとる場合をも射程に入れたうえで、沿岸国との調整を図っているようにも読める。

(ハ) アメリカによる措置の実際 アメリカは麻薬・向精神薬の海上ルートでの流入を防止するため、自国周辺海域において外国船に対する取り締まりを強化してきている。多くの場合、取り締まりの対象となるのは密輸の常習船やアメリカ向けに麻薬を輸送しているという情報がえられた外国船であるが、実務上は、まずそれら船舶に近接し、その国籍を確認した上で旗国に通報し、旗国が自国船であることの確認をしない場合にはこれを無国籍船として処理

 

 

 

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