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しかし、・・・海洋に関する国際法の動向からすると、日韓漁業協定にいう漁業水域も領水とは別個の概念であるとみるほかはなく、このことは当時韓国が主張していた領海の幅は必ずしも明らかにされていないが、当時日本は領海の幅を3海里としていたことからも明らかであり、このような性格を有する漁業水域についての規定が領水における管轄権を制約する趣旨のものと解するには疑問が残る。」

「さらに、日韓漁業協定の前文では、『公海自由の原則がこの協定に特別の規定がある場合を除くほかは尊重されるべきであることを確認し』とされ、もともと、領水とは、沿岸国がその主権に基づきその管轄権を排他的かつ包括的に及ぼし得る領域とされており、特定の条約の文言がその主権行使を制限する趣旨のものと解するには慎重であるべきことを考え併せると、日韓漁業協定4条1項の規定は、当時漁業水域の外側は公海であったから公海における旗国主義の原則が妥当し、これを確認する趣旨の規定と解するのが自然であり、その後の国際情勢の変化等により、領水が日韓漁業協定で定められた漁業水域の外側に拡張された場合にも、なお旗国のみが管轄権を有することまで規定したものではないと解される。」

「日韓漁業協定は、いわゆる李ライン問題等をめぐる日本と韓国との漁業紛争を解決するために漁業水域という枠組みを用い、これにより双方の利害を調整して締結されたものである・・・。(しかるに)・・・日韓漁業協定締結後の海洋に関する国際秩序の進展、確立に伴い、これに適合するように領水に関する法律整備を行った結果、日韓漁業協定に定める漁業水域を超えて領水が拡張されたものであり、これをもって日韓漁業協定の前記趣旨に反するものということはできない。」

「以上検討したところによれば、日本の領水における主権行使としての取締り及び裁判管轄権は、日韓漁業協定の規定及びその趣旨によって制約されるものではないというべきであるから、日本は本件水域における被告人Xの判示第一の漁業行為に関し取締り及び裁判管轄権を有し、被告人三名の判示第二の行為についても、・・・国連海洋法条約111条所定の要件を満たす適法な追跡行為に対して行われたものであるから、同条及び新領海法3条により日本に取締り及び裁判管轄権があるものである。」

 

 

 

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