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そこで、山陰地方、九州地方の沖合の旧日韓漁業協定上の漁業水域の外側ではあるが我が国の新領海の内側で韓国漁船が操業し、外国人漁業規制法違反で検挙されるという事件が発生した(1)。このうち、正式裁判が行われたのは、平成9年6月9日に浜田市沖で検挙された韓国あなご籠漁船第909テドン号事件と平成10年1月20日に五島列島南西海上で検挙された韓国大型トロール漁船第三満久号(マングー3)事件の二件である。このうち、後者は、我が国の新領海で韓国人が行った違反操業について正式裁判で初めて有罪判決が言い渡された事件としてマスコミ等で注目を集めており、しかも、前者の事件と異なり追跡権の行使という重要な問題をも含んでいるので、ここではこの事件を取り上げその問題点について若干の検討を試みることにしたい(2)

 

2. 第三満久号事件長崎地裁判決とその意義

 

(1) 事実関係

本件事実関係は、一審判決が認定した犯罪事実によれば次の通りである。被告人Xは、大韓民国(以下、「韓国」という。)の国籍を有し、韓国大型トロール漁船第三満久号(総トン数139トン)の船長であるが、法定の除外事由がないのに、平成10年1月20日午前10時28分ころ、長崎県南松浦郡玉之浦町玉之浦郷字山ノ神1429番地所在の大瀬埼灯台から真方位111度約40.5海里の本邦の水域(領海線の約17.2海里内側)において、右漁船及び底曳網漁具を使用して漁業を行った(判示第一の行為)。

そして、被告人X、Y、Zは、長崎海上保安部職員海上保安官A外15名が同保安部所属巡視船「いなさ」に乗船し、被告人Xの前記違反操業を検挙すべく前記第三満久号を追跡した上、同巡視船を右第三満久号に接舷・移乗して被告人らを逮捕しようとした際、逮捕を免れるため、共謀の上、前同日午後2時30分ころから午後2時55分ころまでの間、前記大瀬埼灯台から真方位202度約17.6海里の海上ないし同灯台から真方位216度約17.4海里の海上に至る海域(公海上)を航行中の右第三満久号船上において、右Aらに対し、こもごも、多数回にわたり、乾電池を投げつけ、角材を振り回し、同角材で同人らを殴打した上、右Aの顔面を手拳で殴打するなどの暴行を加え、もって、右海上保安官Aらの職務の執行を妨害するとともに、前記暴行により、同人に対し、全治まで6日間を要する顔面挫創等の傷害を負わせた(判示第二の行為)。

 

 

 

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