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新領海における外国人漁業と刑事規制

─第三満久号事件判決を中心に─

岡山大学教授  大塚 裕史

 

1. はじめに

 

我が国と韓国との漁業関係は、これまで昭和40年に締結された「日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定」(以下、「旧日韓漁業協定」という)の下で維持されてきた。この旧協定は、沿岸の基線から12海里以遠の水域では旗国が取締りを行う旗国主義を採用していたが、平成8年に国連海洋法条約が日韓両国に発効したことを受け、両国政府は、排他的経済水域(EEZ)について沿岸国が取締りを行うという同条約の趣旨を踏まえた新たな漁業協定を締結するべく努力を重ねてきた。そして、両国政府は平成11年1月22日午後、ソウルで「漁業に関する日本国と大韓民国との間の協定)(以下、「新日韓漁業協定」という)の批准書を交換し、新協定が即日発効した。これにより、旧協定は同時に失効し、韓国漁船が日本のEEZで漁業を行うには日本の許可が必要になった。

しかし、この間、我が国では国連海洋法条約の締結に伴い、平成8年に領海法の一部改正を行い、領海の基線として直線基線を採用し接続水域を設定した「領海及び接続水域に関する法律」(以下、「新領海法」という)を制定し、これを受けて領海法施行令の一部を改正する政令が平成9年1月1日に施行された。その結果、通常基線を採用する旧日韓漁業協定上は我が国の取締り及び裁判管轄権が及ばないはずの「漁業水域の外側」、すなわち旧領海の外側が、新しく我が国の領海の内側とされるようになった。

 

 

 

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