III どれだけあるの?
海に流れ込むプラスチック類の量は、年間数十万トン(95年国内生産量1,400万トン)と言われているが、それらが長い年月を経る間に砕けたり、すり減ったりしながら微小片となってその数を増大させている他に極微小片となったものの中には、他の物質にくっついて水底に沈んだり、岸辺の泥や砂の中に埋没しているものなど、かなりの量で存在していることも想像に難くない。
このように、プラスチック類のゴミによる環境汚染は海洋環境の保全にとって今や深刻な問題となっている。
IV 何が問題か?
漂流するプラスチック類は高分子化合物と呼ばれるもので、自然界では分解されずに半永久的に存在し続ける性状のものである。それが砕けたり、すり減ったりして微小片となったものや、始めから米粒大のレジンペレットは海棲生物には恰好の餌に見える。海面で餌を捕る魚や水鳥がこれを飲み込んで排泄できずに死んでいることは周知の事実である。
また、近年「環境ホルモン」という名称で話題となっている「内分泌攪乱物質」として疑いのあるフタル酸エステル、ビスフェノールA、アルキルフェノール類、スチレンなども含有していて、プラスチックゴミによる海洋環境へ及ぼす影響は計り知れないものがある。その他にも注目すべき問題点として、PCB、DDT、DDEなどの有機塩素化合物がプラスチック類と親和性があるため、微小片の表面に高濃度に吸着されている可能性も指摘されている。
東南アジア諸国の一部の国では、未だにこれらの化合物が使用されていて、プラスチック微小片がこれらの化合物のキャリアーとなって日本近海や太平洋上を回遊しているのではないかと危ぶむ声が高まっている。
最近、毒物事件が頻発して世間を騒がせているが、人間が日々自然界に対して行っている"罪状"に比べたら「騒ぐほどのものか!」と生き物たちから一蹴されそうだ。
新人ですよろしく
塩釜支部推進員 伊藤 実 41歳
1990年に国際的な環境運動(国際ビーチクリーンアップ運動)に参加してから、海の環境問題にかかわるようになりました。現在は、会員と毎月、海浜に散乱しているゴミの清掃活動を行っでどのようなゴミが何処にどれだけあるかというデータを集めています。これらのデータは、国際的なネットワークを通して集められ、地球規模の環境汚染の現況の把握と将来の環境保全対策の基礎資料となります。