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これらの船舶に乗り組んでいる船員の労働実態が多種多様であって、法律で一律に規制するよりは、その現状に即して命令で定められていく方がより適切と考えられたためである。

2] 乗組員(第72条、則第48条の2)

(i) 甲板部、機関部又は無線部の最上位にある職員で航海当直をしない者及び事務長

(ii) 医師及び専ら看護に従事する者

なお、これらの法令は、船長についてもその職務の性質上、労働時間の規定を設けていない。また、定期的に短距離の航路に就航するため入出港が頻繁である船舶その他の航海の態様が特殊な船舶に関し、主務大臣が指定するものについては、海員の1日の労働時間について命令で別段の定めをすることができるとしている。(第72条の2、則第48条の2の2、第48条の2の3、第48条の2の4、第87条)

 

(2) 労働時間

1] 労働時間の定義

船員の労働時間とは、上長の職務上の命令に基づき航海当直その他の作業に従事する時間をいうとされている(第4条)。

2] 法定労働時間

(i) 海員の1日当たりの労働時間(第60条第1項)

海員の1日当たりの労働時間は、甲板部、事務部等の別にかかわらず一律に8時間以内となっている。

(ii) 海員の1週間当たりの労働時間(第60条第2項)

海員の1週間当たりの労働時間は、基準労働期間(航行中の期間と下船中の休日の期間を合わせた一定の期間)について平均40時間以内となっている(*1)。

(*1) 法第60条第2項におけるこの基準は、労働基準法と同様、1週間当たり40時間とすることとしたものであり、船員労働の実態等にかんがみ、第146条及び船員法第60条第2項及び第62条第1項の労働時間に係る経過措置に関する政令(平成元年政令第8号)により、平成元年より段階的に実施され、平成9年4月1日より週平均40時間労働制に完全移行した。

3] 基準労働期間(第60条第3項、則第42条の2)

(i) 基準労働期間については、航海の期間及び態様に係る事項を勘案して命令で定める船舶の区分に応じて命令で定める期間となっている。基準労働期間は、船舶の区分に応じ、次の5通りの期間が定められている。

イ 遠洋区域又は近海区域を航行区域とする船舶(国内各港間のみを航海するものを除く。) 1年

ロ 遠洋区域又は近海区域を航行区域とする船舶であって国内各港間のみを航海するもの(ハの船舶を除く。)及び沿海区域を航行区域とする船舶(ニの船舶を除く。) 9月

ハ 遠洋区域又は近海区域を航行区域とする船舶であって国内各港間のみを航海するもののうち定期航路事業に従事するもの 6月

ニ 沿海区域を航行区域とする船舶であって国内各港間のみを航海するもののうち定期航路事業に従事するもの及び平水区域を航行区域とする船舶(ホの船舶を除く。) 3月

ホ 平水区域を航行区域とする総トン数700トン以上の船舶であって定期航路事業に従事するもの 1月

 

 

 

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