2. 船長の義務
(1) 船長は、船舶共同体の最高責任者として船舶の安全な航行を確保する等のための様々な公法上の義務を負うこととなっている。
(2) 船長は、船舶共同体の責任者として常に船内にあって船舶を指揮する必要があり、従って船長は、やむを得ない場合または自己に代わって船舶を指揮すべき者にその職務を委任した後でなければ荷物の搭載中及び乗船中自己の指揮する船舶を去ってはならないこととなっている(第11条)。また、船長は、船舶の出入港時、狭水路通過時その他船舶に危険のおそれがあるときは、甲板上にあって自ら船舶を指揮しなければならないこととなっている(第10条)。
(3) 船長は、自己の指揮する船舶に急迫した危険のあるとき及び船舶が衝突したときには、人命、船舶等の救助に必要な手段を尽くす等の義務を有する(第12条、第13条)とともに、他の船舶等の遭難を知ったときも人命の救助に必要な手段を尽くさなければならないこととなっている(第14条)。
(4) 船長は、発航前に船舶が航海に支障ないかどうかその他航海に必要な準備が整っているかどうかを検査する必要があり(第8条)、航海の準備が終ったときは、遅滞なく発航し、かつ、必要がある場合を除いて、予定の航海を変更しないで到達港まで航行しなけれけばならない義務を負っている(第9条)。
(5) また、命令の定める船舶(*1)の船長は、暴風雨、流氷その他の異常な気象、海象もしくは地象または漂流物もしくは沈没物で船舶の航行に危険を及ぼすおそれのあるものに遭遇したときは、そのことを付近にある船舶及び海上保安機関等に通報しなければならないこととなっている(第14条の2)。
(*1) 命令の定める船舶とは無線電信または無線電話の設備を有する船舶である(則第3条の2第1項)。