昭和38年10月には、同条約の国内法化のための船舶安全法の一部改正が行われ、総トン数300トン以上総トン数500トン未満の非旅客船で国際航海に従事するものに対しても新たに無線電信又は無線電話を施設することが義務付けられた。また同様に、検査対象船舶の増加に対処して船舶検査の合理化を図るため、認定事業場制度の導入、予備検査対象物件の範囲の拡大が図られた。
危険物の運送に関しても、各種産業特に石油化学工業の発展により火薬類、高圧ガス等の危険物が大量かつ広範囲にわたって船舶運送されるようになったこと、また、1948年の海上における人命の安全のための国際条約によって、条約締約国政府に対し危険物関係規則の整備を義務付けられたこと等により、昭和32年8月、現在の「危険物船舶運送及び貯蔵規則」が制定された。
特殊貨物の運送に関しては、硫化鉄鉱、亜鉛精鉱等の含水微粉精鉱を船舶にばら積みして運送する場合に、船舶の動揺、振動等の影響を受けて、精鉱に付着した水分が分離して表面ににじみ出し、積載した精鉱が泥状となって船内を流動し、船体に動揺を与えたための海難が続発したこと、1960年の海上における人命の安全のための国際条約により穀類のばら積みをする場合の基準が規定されたこと等により、昭和39年9月に「穀類その他の特殊貨物船舶運送規則」が公布され、この種の特殊貨物運搬船の安全策が強化された。
昭和41年3月には、ロンドンにおいて1966年満載喫水線に関する国際会議が開催され「1966年の満載喫水線に関する国際条約」が採択された。同条約は、1930年の満載喫水線に関する国際条約に代るもので、船舶の大型化、溶接工法の急速な進歩、鋼製ハッチカバーの採用等船舶建造技術の発展に即応した内容のものとなった。我が国においてもこの条約を受諾するとともに昭和45年5月に船舶安全法の一部が改正され新たに近海区域を航行区域とする総トン数150トン未満の船舶、沿海区域とする長さ24メートル以上の内航船、漁業練習船等についても満載喫水線の標示が義務付けられた。また同時に、新たに無線電信施設を設けなければならない船舶として、沿海区域を航行区域とする総トン数100トン以上の内航旅客船、沿海区域を航行区域とする総トン数300トン以上の内航非旅客船等が追加された。
昭和40年代に入ると、国内景気の上昇を反映した所得水準の向上、労働時間の短縮等によるレジャー人口の増大、海洋レクリェーションの活発化が進み、モーターボート、ヨットその他の小型船舶の普及が目覚しく、また、漁場の関係から小型漁船の操業区域が遠距離化してきたことにより、これら小型船舶の安全性の確保が強く要請されるところとなり、昭和48年9月「船舶安全法」の一部が改正され、小型船舶のうち安全対策が急がれるプレジャーボート、遊漁船、遠隔漁場出漁の小型漁船等について安全基準が定められ検査が行われることとなった。