なお、この改正により新たに検査対象となる船舶の隻数が極めて多いこと、しかしながら長さ12メートル未満の船舶は、特殊な構造のものを除けば画一的に生産される傾向が強く、構造が比較的簡単であることから昭和49年1月に日本小型船舶検査機構の設立が認可され、国の十分な監督のもとに小型船舶の検査に関する事務及び型式承認を受けた小型船舶等の検定が同機構において行われることとなった。
昭和47年11月には、国際運送における急速なコンテナリゼーションの発展に伴い、コンテナの荷役、運送時の安全性を維持するとともにコンテナによる国際間運送の円滑化を図ることを目的として、ジュネーブにおいてUN/IMCO(現在のIMO)合同国際コンテナ輸送会議が開催され、「安全なコンテナに関する国際条約」が採択され昭和52年9月から発効した。我が国は翌53年6月に同条約に加盟するとともに、コンテナの検査、監督及び安全承認板の取り付け等について関係規定の整備が行われた。
昭和49年には、ロンドンにおいて1974年の海上における人命の安全のための国際会議が開催され、1960年の海上における人命の安全のための国際条約以後の技術革新に対処するため船体構造、機関、救命及び消防設備等について規定の整備が行われ「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」が採択された。同条約は昭和55年5月に発効し、我が国も同条約に加盟するとともに、船舶防火構造規則の制定を始め、関係規定の整備が行われた。
昭和51年末から翌52年初めにかけて、米国の沿岸でタンカーの事故が続発したことから、昭和52年3月米国は一連のタンカーの安全及び海洋汚染防止対策を打ち出し早急に国際会議で審議するよう各国に要請した。これを受けて翌53年2月ロンドンにおいてタンカーの安全及び汚染の防止に関する国際会議が開催され、「1974年の海上における人命の安全のための国際条約に関する1978年の議定書」が採択された。同条約は昭和56年5月に発効し、我が国も同条約に加盟し、関係規定の整備が行われた。
小型漁船(総トン数20トン未満の漁船)の検査については、本邦の海岸から100海里を超える海域で操業する漁船の一部については昭和49年より検査が実施されていたが、昭和53年6月、「船舶安全法第32条の漁船の範囲を定める政令」の一部が改正され、昭和55年4月からは本邦の海岸から12海里を超える海域で操業する小型漁船について検査が実施された。
また、放射性輸送物の運送に関しては、昭和50年1月、原子力委員会が、国際原子力機関(IAEA)の「放射性物質安全輸送規則(1973年版)」に準拠した「放射性物質等の輸送に関する安全基準について」を決定し、所要の法令整備を行うよう勧告したことを受け、昭和52年11月、「危険物船舶運送及び貯蔵規則」の一部が改正され、放射性輸送物の海上輸送の安全基準の強化が図られた。