同時に検査制度の合理化を図るため、造船所からの注文を待たずに製造されることが一般的である舶用機関、船体部品等について、備え付けるべき船舶の特定前の製造過程等において船舶安全法上必要とされる検査が受けられるよう予備検査の制度が設けられた。さらに危険物の運送及び貯蔵に関し必要な規制を行うこととし、これを受けて昭和9年2月に「危険物船舶運送及び貯蔵規則」が公布され火薬類を火薬庫以外の場所に積付けて運送しようとする場合には、主務大臣の許可を受けるか又は主務大臣の認定した公益法人(昭和9年(社)日本海事検定協会を認定)の検定を受けなければならないこと等が定められた。
我が国が急速に戦時体制に入っていくなかで、昭和17年7月、長さ15メートル以上の鋼船の検査事務が海軍省に移管、同12月には、海上輸送力の増強対策の一環として「船舶検査ニ関スル戦時特例」が公布される等一連の戦時特例措置が講じられた。
戦争の終了とともに、船舶の検査制度についても、戦時特例の廃止、行政民主化のための制度改正が行われた。
船用品については、「船用品取締規則」により船用品製造免許制度が採られていたが、昭和22年12月免許制度を廃止し、翌23年6月新たに「船用品型式承認規則」を制定し、船用品を製造する者の申請により型式承認が受けられることとするとともに、型式承認品について検定の制度を導入した。
昭和22年12月には「船舶安全法」の一部改正が行われ、船舶検査に関する事項を記録するための船舶検査手帳の交付制度、船舶所有者からの船舶の堪航性及び人命の安全に関する事項についての届出徴収制度が設けられた。
昭和23年4月にはロンドンにおいて海上における人命の安全のための国際会議が開催され、1929年の海上における人命の安全のための国際条約締結以後の技術進歩に適応した条約として「1948年の海上における人命の安全のための国際条約」が締結され、我が国は昭和27年7月この条約に加盟した。
この条約の加盟に当たり、同年6月船舶安全法の一部が改正され無線設備の強制適用範囲を拡大するとともに、旅客船における火災の拡大を防止するための必要な防火構造等の基準を定めた「船舶防火構造規程」の公布等同条約に規定されている技術基準の内容を採り入れるための関係法令の整備が行われた。
昭和28年7月には、「船舶安全法」の一部が改正され、従来同法の検査の規定の適用が除外されていた総トン数5トン未満の汽船等であっても、旅客の運送の用に供するものについては同法の規定を適用し、主務大臣が必要と認める時には随時に検査が行われることとなった。
国際的には、1948年の海上における人命の安全のための国際条約の抜本的な見直しの気運が高まってきたことにより、1960年5月、ロンドンにおいて海上における人命の安全のための国際会議が開催され「1960年の海上における人命の安全のための国際条約」が締結された。