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結局、改革を支持する世論の圧力と悪化する年金退職金基金に直面し、労働組合側は合理化案を受け入れざるをえなくなった。

高雄港務局は、1997年10月に22社(うちコンテナ荷役会社14社)に対して港湾運送事業への参入を認めた。新会社は、1998年1月1日から事業を開始した。現在就業中の労働者を優先するという条件付きながら自由に労働者を雇用できるようになり、賃金を含め契約も自由になった。港湾運送事業者間の自由競争が行われ作業効率は向上し、ある船社によれば労働力が半分になり、生産性が10〜20%向上した。港湾労働者の賃金は大幅に低下したが、それでもなお一般労働者と比べやや高い水準にあるという。

規制緩和の代償として、交通部は、110億台湾元の港湾労働者退休職基金を設置した。失業者は最高440万台湾元の給付を受けられ、約4,000人が退職した。制度改正後も仕事の継続を望む労働者は2,542人いたが、新規事業者に対してCCTCの失業者を優先的に採用することを求めていたため、全員各荷役会社から雇用された。従来の労働保険は、雇用された荷役会社で継続が認められた。また、港湾運送事業の過当競争を防ぐための罰則規定を設けるなど、規制緩和による激変を緩和する措置を導入している。

高雄港の港湾運送事業民営化について、今回現地調査で訪れた船社や船社代理店は高く評価している。労働組合は代償措置の導入により、規制緩和後はとくに激しい反対運動は起きていないようである。交通部では、これらの点から総合的にみて民営化は成功と評価している。

高雄港に引き続き、基隆港でも1999年から港湾運送事業の民営化が行われる予定である。高雄港と同様に、船社は自社もしくは荷役会社と契約して港湾運送を実施できるようにする計画である。コンテナ荷役会社7社、在来貨物荷役会社6社に対して免許が交付される模様である。基隆港に続いて、花蓮港でも民間会社に港湾運送事業が開放される予定である。

 

(3) コンテナバース整備への民間資金導入

コンテナバース整備への民間資金導入は、海運行政、港湾運営・管理の機構改革、港湾料金と管理方式の改善、港湾運営効率の改善にかかわるばかりでなく、限られた資金で国際港湾の処理能力を拡大するうえでも重要である。

高雄港ではコンテナバースNo.4までは、原則としてガントリークレーン、ストラドルキャリア、トランステナー等の荷役機械を含めてすべての施設を高雄港務局が建設、整備してきた。しかし、1995年に一部供用が開始されたNo.5からは、段階的に借受船社が整備する割合を拡大している。Hyundai、Maerskが借り受けたバースでは、借受船社がガントリークレーン等の荷役機械の整備を行い、1998年に供用を開始したHanjinのバースではコンテナヤードの舗装、建物の整備まで船社が行っている。

コンテナバース整備で船社の役割が拡大することは、船社の要望にもかなっている。

 

 

 

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