日本財団 図書館


ロジスティクス・サービス市場におけるシンガポール港運営(株)の第一の戦略は、荷主ニーズにきめ細かく対応したロジスティクス・サービスを提供することである。たとえば、シンガポール港運営(株)は、アジア・パルプ・アンド・ペーパー社とジョイントベンチャーを組み、シンガポールを物流拠点として製品を海外に輸出している。また、自動車産業の物流についてロジスティクス・サービスを専門に手がけている民間企業とパートナーシップを組み、業界の特殊なロジスティクス・ニーズに対応したサービスを提供する予定である。シンガポール港運営(株)の第二の戦略は、海外の大手製造業と組み地域に密着したロジスティクス・サービスを開発することである。具体例としては、チャイナ・マーチャント・ホールディングス・グループと組み、上海をはじめとする中国の主要都市においてその土地の特性を考えたロジスティクス・サービスを提供するという。

 

(7) インフォメーション・テクノロジー(IT)を基盤としたロジスティクス・サービスの展開

現在、シンガポール政府は、ITを基盤としたロジスティクス・サービスの展開に力を入れている。2001年にフル稼動する予定の情報システムが、トレード・ネット・プラス(TradeNet Plus)である。これは18のモジュールからなる情報ネットワークにより、世界中の貿易関連データとそれに対応した資金の流れ、ロジスティクス・マネージメントと貿易業務の決済を一つのエレクトロニクス・システムによって統合する計画を進めている。トレード・ネット・プラスは、1989年に導入されたトレード・ネットの成果を踏まえている。トレード・ネットは、輸出入業者、港湾管理者、海運代理店、およびフレイト・フォワーダーをつなぐ全国的なEDIシステムであり、輸出入とトランシップメントのうち95%をこのシステムによって処理している。

 

(8) 「シンガポール株式会社」のロジスティクス・サービスへの取り組み

現在、政府の貿易開発機構がイニシアチブをとってLEAP(Logistics Enhancement and Applications Program)というプログラムを組織している。このプログラムの目的は、ロジスティクス・サービスの拠点としてシンガポールの競争力を強化するための戦略を検討することにある。LEAPには、シンガポール港運営(株)をはじめとする11の政府機関が参加している。また、研究機関、ソフトウェア会社、ロジスティクス会社、および産業団体がLEAPの活動に協力している。LEAPでは、人材開発、ビジネス・プロセス、技術開発、およびインフラストラクチャー開発の4分野での取り組みを検討している。また、各産業のトレーニングに対するニーズ、国際標準、リアルタイムでの在庫確認システム、車両のスケジューリング、トータル・ロジスティクス情報システム、ロジスティクス・サービス提供者へのEDIゲートウェイ等について検討するプロジェクトが組織された。シンガポールのロジスティクス・サービスの水準を上げるために、政府主導の取り組みが続いている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION