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この解釈によれば、岸壁部分は国の行政財産であり、国が港湾管理者に行政財産の管理を委託し、港湾管理者は埠頭公社にその使用許可を与えるという関係になる。

今後、大阪湾において新方式によって大水深バースを建設するとすれば、施設整備は岸壁が公共事業(国と大阪市)、背後用地が港湾管理者(大阪市)、上物施設については(財)大阪港埠頭公社が担当することになる。上物施設の整備費用は、国と大阪市が(財)大阪港埠頭公社に無利子貸付を行う。なお、(財)大阪港埠頭公社では、まだ新方式による大水深バースの建設は行っていない。

 

(5) 新方式導入の背景

1) 総合物流施策大綱の目標

平成8年12月17日閣議決定された「経済構造改革の変革と創造のためのプログラム」においては、経済構造改革のなかでも物流改革が最重要の課題のひとつと位置づけられ、平成13年(2001年)までにコストを含めて国際的に遜色のない水準の物流サービスを実現することが目指されている。さらに、平成9年4月4日閣議決定された総合物流施策大綱に述べられた「基本的考え」によれば、関係省庁が物流に関する総合的な取り組みを強化する必要があることを意識し、1]アジア太平洋地域でもっとも利便性が高く魅力的な物流サービスが提供されるようにすること、2]このような物流サービスが産業立地競争力の阻害要因にならない水準のコストで提供されるようにすること、3]物流に係るエネルギー問題、環境問題、および交通安全等に対応していくこと、を政策目標として掲げている。新方式を導入した背景には、上記の目標の1]と2]が関わっている。

 

2) 新方式のおもな目的

新方式の導入によって期待されているのは、もっとも費用がかかる岸壁の整備について国の負担分を増やすことにより、借受者が支払う岸壁の使用料(接岸料)を安くすることである。以下では、埠頭公社の貸付料設定のしくみを要約し、岸壁の整備に国の負担分を増やすことが港湾管理者や埠頭公社にどのような影響を与えるかを解説する。

まず、貸付料の設定にあたっては、埠頭公社の事業目的と整合した料金設定の原則が重要である。埠頭公社の専用バースの貸付料については、承継法によって原価回収方式が定められている。

次に、係船岸壁使用料(料率)の算定方法であるが、六大港湾協議会の申し合わせによれば、岸壁使用料=岸壁の管理運営に必要となる原価/係船船舶の延べ総トン数、と定義されている。

岸壁の管理運営にかかる原価は、1]人件費、2]庁費:岸壁の管理運営に必要な間接的経費、3]運営費:岸壁の管理運営に必要な直接的経費、4]施設保全費、5]公債利子:公債利子総額を借用期間に均等に計上する、6]減価償却費:基礎価格の90%、定額法、耐用年数は施設により異なる、である。これらの原価に基づく埠頭公社の貸付料算出のしくみは、図表I-7-1のとおりである。

 

 

 

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