2) 阪神港─地方港間競争
ところで関西地方内部での港湾間競争は阪神両港間のみにとどまるものではない。阪神両港以外では、舞鶴港、和歌山下津港、姫路港がコンテナ港湾施設を保持・建設しており、またコンテナ航路を開設している。これら関西地方内部の地方コンテナ港湾はコスト重視型FCL貨物のみを扱ってきたため、それぞれ京都北部と兵庫県・福井県・鳥取県の一部、和歌山県、兵庫県西部の大荷主の輸出入貨物が取扱貨物のほとんどである。これらの貨物が従来は神戸港あるいは大阪港で扱われていたことは言うまでもない。これら関西内部の地方港のコンテナ港湾化によっても阪神港の集荷力は部分的に落ちていることになる。
さらに前述した高麗海運のプサン・リレーでの香港・シンガポール多国籍混載ネットワークには舞鶴港が含まれているため、今後、日本海側関西地方のLCL貨物が一部、舞鶴港─プサン港─香港・シンガポール港ネットワークに流出する可能性もある。したがって国内遠隔地コスト重視型の貨物だけでなく、国内遠隔地サービス重視型の貨物の集荷においても関西地方内部で集荷競争が展開されることも予想される。
(3) 東アジア域内における港湾間競争と関西諸港
1) 国際トランシップ貨物の取扱い状況
(a) 神戸港の国際コンテナ・トランシップ貨物量・比率の推移
神戸港の国際コンテナ・トランシップ貨物量は大震災の前年まで増加傾向を見せていたが、大震災以後、伸び悩んでおり、震災以前の半分程度に落ち込んでいる(図表I-4-23)。
図表I-4-23 神戸港の国際コンテナ・トランシップ貨物量・比率の推移
出所:図表I-4-18に同じ
(b) 神戸港の国際コンテナ・トランシップ貨物の仕出し・仕向け国の変化
神戸港の国際コンテナ・トランシップ貨物は北米─アジア間での流動が最も多いため、北米─アジア間に限ってみてみると(図表I-4-24)、大震災以前は韓国─北米間のトランシップ貨物が減少する一方で、中国─北米間のそれが、とりわけ中国発北米着貨物で増加していた。
この背景には釜山港の整備による韓国─北米直航化が進む一方で、米中間経済関係の緊密化にもかかわらず、中国諸港湾の整備の遅れが見られたため、米中間貨物を神戸港でトランシップする動きが活発になったからである。しかし大連、青島、上海等の中国諸港湾の整備の進展という状況の中で、大震災後、神戸港の米中間トランシップ貨物は減少傾向にある。
このように東アジア全域におけるコンテナ港湾整備の進展により、どこの港湾であれ国際トランシップ貨物を取り扱うことはしだいに困難になってきている。
図表I-4-24 神戸港の北米─アジア間トランシップ貨物の動向
出所:図表I-4-18に同じ
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