日本財団 図書館


ところが、同じ行動相違型であっても、もしラグ反応型の方を選べば、集中度の増加は、逆に運賃を引き下げるという好ましくない非合理な結果を生むからである。このような事態はコンテナ船社としては避けなければならない。この点からも即応型モデルの現実的意義を支持できよう。

 

3) 運賃決定メカニズムの評価

行動相違型即応モデルの推定結果に注目すると、ヨーロッパ航路市場の運賃決定要因の作用は、太平洋市場とは異なって、船型、需給比率、集中度、複合輸送比率のどれをとっても極めて確実で、信頼度が高い(その係数のt値は、すべて1%水準で有意である)。したがって、ここで明らかになった運賃決定メカニズムは、当面は継続して有効であろう。その特徴は次のとおりである。

・ 「コスト要因」は、太平洋市場と同様に不安定な作用に止まっている。

・ 「運航船型の大型化」は、ほぼそれに見合うだけの運賃上昇をもたらす(運賃の船型弾力性は、0.98)。しかし、本来この要因は規模の経済をもたらすコストの引き下げ作用をもつはずだから、その合理的な本来の作用の方向とは、逆行する状況が現れている。

・ 「需給比率」は、市場の期待とは逆に、非合理的要因の機能を示唆している。市場の景気状態とは逆の方向に運賃を動かそうとする、管理価格指向が読み取れる。運賃の需給比率弾力性はマイナス1.92である。

・ 「集中度」の1%の上昇は、西航市場運賃を3.33%、東航市場運賃を3.46%上昇させる。

・ 「複合輸送比率」(西航市場では、ヨーロッパ向けコンテナ船総輸送能力に占める地中海向け輸送能力の割合;東航市場では、その逆で、アジア向けコンテナ船総輸送能力に占める地中海出し輸送能力の割合)の1%の上昇は、集中度の作用とは逆に、運賃を3.23%下落させている。

 

4) 閉鎖型同盟市場は、どのように転換したか

このような決定因の作用は、図表I-2-7にまとめられる。この市場でも、不安定要因であるコストをカバーできていない事は問題である。しかし何よりもこの市場の運賃決定メカニズムを特徴づける事象は、企業の水平的統合や生産設備の大規模化といった、いわゆるハードレベルでの直接的対応がプラス要因になっているのに対し、新サービスを創出するための垂直的統合や景気への反応といったソフト的な対応がマイナス要因として後れをとっていることである。

 

図表I-2-7 ヨーロッパ航路市場における運賃決定要因の機能

047-1.gif

(注) 複合輸送比率は、図表I-2-2に示したように、どのような符号をとっても、非合理とはいえない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION