(3) 市場タイプ仮説と運賃決定モデル
ここでは、先に提示した2種類の市場タイプ仮説を運賃決定モデルに組み込んで、線型1次式で特定化しよう。そこで、
FR:航路別コンテナ船運賃(TEU当たりUS$ 資料:Containerization International)
SC:コンテナ船船価(TEU当たりUS$,2,500TEU型 資料:Lloyd Shipping Economist)
OC:燃料価格(メトリックトン当たりUS$、ロサンゼルス港 資料:大阪商船三井船舶(株)『海運調査月報』)
SS:航路別運航船型(TEU 資料:日本郵船(株)『世界のコンテナ船隊および就航状況』)
DS:航路別需給比率(% 資料:(財)海事産業研究所『世界の主要定期船荷動量報告』『海外海事情報』、大阪商船三井船舶(株)前掲書、日本コンテナ協会『コンテナリゼーション』)
HI:航路別集中度(ハーフィンダール指数 資料:日本郵船(株)『世界のコンテナ船隊および就航状況』)
VI:航路別複合輸送率(% 資料:日本郵船(株)、同上書)
DR:復航航路のダミー変数(往航航路=0、復航航路=1.0)
i:時間の遅れ(四半期)
とする。
なお航路別複合輸送比率(VI)は、コンテナ船業の就航状態を年別にとらえている日本郵船の調査データを利用して、サプライサイドから把握している。こうした方が、複合輸送戦略にサプライ側の戦略性を含む変数としてのインプリケーションを与えられると考えたからである。例えば、太平洋航路の複合輸送比率は、北米西海岸向けコンテナ船腹の量をこの航路で稼働するコンテナ船腹の総量で割算して求められたものであり、東航市場と西航市場において同値である。その他の市場についての複合輸送比率の求め方については、関係する箇所においてなされている。
1) 構造相違型市場モデルの特定化
構造相違型市場モデルは、(1)式(p.48に前掲)を指数関数で特定化し、対数線型1次式で近似すれば、
(2) ln(FR)=(a0+a0'DR)+a1ln(SC-i)+a2ln(OC-i)+a3ln(SS)+a4ln(DS)+a5ln(HI-i)+a6ln(VI)
のように形成される。このとき、符号条件は、図表I-2-2に見られるように、
a0、a2、a4>0;
a3<0;
a5>0 あるいは a5=0;
a6≦0 あるいは a6≧0
である。