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企業の水平的連携のダイナミックな進展は産業組織のみならず、企業戦略効果の面でも注目される。

また、もう一つの関心は、サービス生産における垂直的統合の進展が海上運賃にどのように作用するかという問題である。物流の垂直的統合をねらう製造業のロジスティクス戦略に対応したコンテナ船業の複合輸送戦略は、異なる輸送モードを結合して、新しい物流サービスを創出する事をねらっている。その意味で、複合輸送戦略は、サービス生産における垂直的統合戦略なのである。この戦略の効果は、一般に海上運賃部分を引き下げるためマイナスになると見られている。またその事が、コンテナ船業が付加価値戦略に向かうインセンティブを殺いでいると説明されてきた。

確かにキャリアとしてのコンテナ船業の提供する物的・場所的・時間的に標準化された、マクロ的複合輸送戦略のレベルでは、輸送活動が海上から陸上に延長されたものにすぎないから、それだけでは製造業を始めとする荷主のロジスティクス戦略に対応するサービスとは見做されない。そのため、このレベルを越えない複合輸送戦略は、本来、付加価値戦略と呼ぶには値しない。複合輸送戦略が付加価値戦略と呼び得るのは、この戦略が、物的・場所的・時間的戦略を越えて、人的なレベルの戦略に及ぶケースである。

したがってキャリアの垂直的統合戦略が人的レベルにまで及び、荷主のロジスティクス戦略に完全に対応するとき、海上運賃は逆に上昇するケースもある。もっとも、本来、複合輸送戦略の評価は、door to doorの一貫運賃との対比で成されるものであるから、本章でのこのような評価方法には一定の限界がある。したがって、垂直的統合戦略が少なくとも海上運賃の下落をもたらさないならば、そこには複合輸送戦略が垂直的統合戦略として、荷主のロジスティクス戦略に対応して十分に機能している可能性があると見て良いであろう。あるいは、その様な航路では、ロジスティクス戦略対応行動が、キャリアの収益の向上に結びついている可能性を否定する事はできないであろう。

運賃決定モデルの計測に当たっては、先にふれたように、四半期の運賃データを被説明変数に用いる。そこで、説明変数である決定因のうち、集中度とコストについて、4四半期分、つまり1年のラグを設けた「ラグ反応モデル」と、すべてを現在値で対応した「即応モデル」の計測を行う。その結果、決定係数のレベルに明らかな差があれば、レベルの高い方のモデルが現実の状況に妥当していると判断する。したがって、三大航路市場の運賃決定については、次の4種類のモデルを計測し、その適合度を評価する。

構造相違型ラグ反応モデル

構造相違型即応モデル

行動相違型ラグ反応モデル

行動相違型即応モデル

 

 

 

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