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3) 日本におけるサードパーティ・ロジスティクス(TPL)の概念

日本では、SCMとともにTPLが紹介されたこともあり、SCMにおけるロジスティクス管理を行う事業者として理解されているように思われる。たまたま物流市場の環境変化が著しい時期に登場したためか、TPLの概念は多くの文献で紹介されている。

総合物流施策大綱でも環境変化、なかでも規制緩和との関係でとりあげられている。同大綱では、総合的な物流施策に取り組む際の視点として「競争促進による市場の活性化」を掲げている。規制緩和を通じた競争的環境のもとで、「多様化・高度化している物流ニーズに対応した業態・サービス」として、サードパーティ・ロジスティクスなどの業態・サービスが育成されるとしている。ここでサードパーティ・ロジスティクスについて「荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託する業務」と説明を加えている。

 

(3) 米国におけるサードパーティ・ロジスティクス(TPL)の現状

1) 規制緩和とサードパーティ・ロジスティクス(TPL)の成長

米国でTPLが本格化したのは、規制緩和が浸透した1980年代以降のことである。規制緩和によって州を跨るトラック輸送が自由に行えるようになり、複数の物流分野に多角化することが可能になった。一方、荷主企業は国内市場での競争が激化し、本業への集中化のためロジスティクス分野をアウトソーシングするようになった。アウトソーシングの受け皿としての物流事業は、当初コントラクト・ロジスティクスと呼ばれる場合もあったが、現在ではTPLと呼ばれる場合が一般的である。

事業規制面でみた場合、TPLという事業区分はなく、事業者が提供するサービスに相当する事業規制を受ける。利用運送を行う場合であればフレイト・フォワーダー、運送取次を行う場合であれば輸送ブローカーとしての資格が必要となる。両事業とも連邦運輸省への登録制であるが、参入要件としては適格性、意志、能力、保証金、保険の付保であり、フレイト・フォワーダーの場合には運送責任を担う分、賠償責任保険の要件が厳しい。両事業の規制緩和後、荷主から預かった運賃を持って夜逃げするような運賃事業者が大量に参入したため、悪質な参入業者を排除するため保証金、保険の付保などの要件が引き上げられた。しかし、実質的な経済的規制はごく緩やかであり、このことがTPLの自由な運営をもたらしている。

実運送事業者としてTPLを行う場合には、当然その実運送に該当する事業の規制を受ける。しかし、もっとも重要な輸送機関であるトラック輸送に対する経済的規制はほとんど撤廃された。1980年自動車運送事業者法(MCA)では、州際輸送の規制が実質的に大幅緩和された。運賃は制度上届出運賃制度とされたが、実際は値引きが常態となり、1994年にはトラック輸送産業規制改革法(TIRRA)により届出制も廃止された。残存していた各州の公共事業委員会による州内輸送規制も、1994年には廃止された。州際トラック輸送を規制していた州際通商委員会(ICC)すら、1995年には廃止された。

 

 

 

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