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1998年に供用開始された2大プロジェクトである戡湾および光陽ターミナルにおいて、KCTAが発行するターミナル開発債購入の形態での民間資金導入を行ったことをはじめ、新規プロジェクトほど民間資金への依存が大きくなっている。

KCTAが管理するターミナルは、ターミナルあるいはバース毎にターミナル・オペレーターに有償賃貸されているが、ターミナル・オペレーターの所有構造と賃貸契約の形態はターミナルごとに異なる。新規ターミナルのオペレーターほど民間所有が多くなり、契約も競争入札に近くなっている。

釜山の西140kmに建設されている光陽ターミナルについては開発的な色彩が強く、現在のところ寄港船社にとって魅力が少ない。このため港湾料金の割引を行っているが、この政策が流動的になって、かえって加徳島などの競合する新規ターミナルへの民間投資の意欲を削いでしまっている。

 

第2章 香港

香港の場合、もともとターミナルの整備・管理・運営は全て民間企業が行っているため、民営化という方向というよりも、香港港にコンテナ貨物が集まるシステムの構築を香港特別行政区政府が、民間大港湾・海運企業のニーズを汲み取ってそれをもとにして政策展開するという形で、いわば「官民融合」体制を形成しつつある。その背景には中国国内における港湾間競争の激化や香港の民間コンテナ・ターミナル・オペレーターの多国籍港湾ターミナル化がある。近年、中国国内の新興コンテナ港湾が急速に台頭してきており、集荷圏を中国本土に大きく依存するようになりつつある香港港にとっては大きな脅威となっている。この新たな港湾間競争への対応として、香港の民間コンテナ・ターミナル・オペレーターは多国籍港湾ターミナル化を進めており、それによってコンテナ貨物需要が急激に増大しつつある中国市場へ新規参入するライバルの成長の芽をあらかじめ摘む戦略をとるとともに、グローバル・アライアンスに対応したコンテナ・ターミナル・サービス・ネットワークの構築を進めている。一方、特別行政区政府は水陸両方でコンテナ貨物の香港ネットワークを中国国内に作ることによって香港を拠点としたコンテナ貨物流動システムを構築しようとしている。民間コンテナ・ターミナル・オペレーターの成長・生き残り戦略と都市経済香港の地域経営がリンクする形で秩序を持っている。そして「官民融合」体制の下で香港特別行政区政府は具体的かつ一貫した政策を展開しているのである。

 

第3章 シンガポール

シンガポール港湾庁(PSA)は、通信省の監督下におかれた法定機関で、1964年に設立され1997年9月末まで存在した。港湾庁は政府の経済計画にそって戦略的に港湾を建設し、所有し、管理運営するという中央集権的な管理を行っていた。

 

 

 

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