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とりわけ趨勢としての民間関与増大の賛否を大まかに論じる時代は終わり、民活自体は当然視されるようになったとの考えに基づき、英国とニュージーランドの既設港湾民営化を検討する。問題は民営化実行案とりわけ株式売却方法、ならびに港湾の公共性を担保したセーフガード措置の中身にある。

民間関与が増大している港湾にあって、所有と運営という上下分離構造のなかで公共部門が担っている役割は様々である。あわせて港湾民営化の効果に関し、対象として英国を中心に行われた計量分析についての紹介を行う。立地による格差が大きすぎ、民営化の効果自体は確認できていない。

 

第7章 港湾管理者が直面する政策執行上の課題

本稿では、1]大水深コンテナ・ターミナルの整備、2]新たな港湾整備方式の導入、3]総合輸入ターミナル等の整備、の三つの施策について、港湾管理者の視点からみた政策執行上の課題を事例を使って解説する。1]と2]については、港湾投資とバース利用料金を引き下げるための公的資金の投入、および建設後の料金設定に関して、港湾管理者と埠頭公社が抱えている財政上の問題を整理する。1]と3]については、地方の中核国際港湾を管理する自治体が直面している港湾投資と、コンテナ・ターミナル建設後の集貨体制の問題を解説する。これらの事例では、政策担当者が直面する課題を解決するために導入した政策が、港湾管理者にあらたな負担を課している実態を考える。

今後、公共部門の事業に関する民営化の進展によって表面化する課題が、港湾管理における公共部門と民間部門の役割分担である。ここでは社会資本の建設・運営において「民設公営」というパターンをとった新居浜港務局のケースを紹介する。港務局は、今日的な課題である地方分権を先取りした管理組織であるが、港湾管理者としての財政上の自律性が確保されていない。この事例は、民間企業が社会資本を建設し、その管理を公共部門が行う場合には、管理を行う組織の議決・執行のルール、および財政的な自律性を確定しなければ分権的な機能が十分に発揮し得ないことを示している。

 

第II部 海外調査編

第1章 韓国

韓国においてはコンテナ貨物の95%以上が釜山港で取り扱われている。この貨物集中のために船混みと市内・都市間道路の混雑が発生し、さらにオフドック荷役と呼ばれる釜山特有の港湾ターミナルをバイパスしたコンテナ荷役形態がとられている。

そのようななかでコンテナ・ターミナルへの投資を促進するため、1990年度にわが国の外貿埠頭公団を模した組織である韓国コンテナ埠頭公団(KCTA)が設立され、コンテナ・ターミナルからの収入のプールが行われるようになった。

 

 

 

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