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ナ港湾の建設ラッシュ、大阪港の存在、関西経済自体の落ち込みという全体状況を考えるならば過剰反応する必要は全くない。潜在的な荷主を含めた荷主の広汎なニーズの収集とそれへの具体的対応という地道な努力こそ神戸港の競争力を維持・強化するためには必要とされている。

 

第5章 港湾運送の改革と物流政策

わが国を取り巻く国際的水平分業の増加によって、わが国の製品輸入が増加した。生産プロセスのなかに物流が組み込まれた結果、従来とは異なった高度で効率的な国際物流サービスが求められるようになった。全体としてわが国に有利なハンデつきの国際競争にもかかわらず、形勢が不利になっているところにわが国の港湾の抱える複雑な問題があるのである。

その中、ここ数年、国内物流ないし国際物流の国内部分のコスト/運賃に関する国際比較が盛んに行われるようなってきた。しかしその間、荷主側の関心は先進国間での料金や物流コストの比較という観点を離れて、現実に競争関係にある近接したアジア諸国などとの間でのサービス水準を含めた比較を強調するようになっていった。

港湾運営問題を代表する港湾運送業の規制緩和に関しては、行政改革委員会などの議論を経て部分的規制緩和が決定され、強制水先の範囲についても神戸港を皮切りに見直しが行われた。また総合物流施策大綱では、関係省庁間の縦割りを排して、港湾関連のコストおよびサービス水準を国際的に遜色ない水準にするための数値目標がかかげられ、行動計画の定期的見直しの形態での物流改善も一応のスタートをみた。しかし現在行われているスピードでの改革では、物流市場におけるダイナミックな変化に到底ついていけそうにない。

港運の下請比率規制の緩和による元請・下請関係の柔軟化、ならびに集約化については既に決定されている。しかし元請同士を含めた規模拡大をはかるうえでは、現状の船社系と荷主系の境界線も障害となる。国際物流事業全体のアライアンス変化として問題をとらえる必要がある。

 

第6章 港湾管理制度の改革と民営化の方向性

わが国においても港湾のあり方を考えるうえで、港湾管理制度のあり方、ならびに港湾管理者の効率改善インセンティブや港湾管理者間競争は看過できない基本的問題である。港湾の所有・管理形態の適正化を通じて港湾物流の活性化が促進される余地は相当多いと考えられる。

各国の港湾管理制度は極めて多様化している。それにとどまらず各国の国内においても様々な管理形態が併存している。わが国の港湾管理制度についても、柔軟な発想から抜本的改革を行う必要がある、との観点から、国際的趨勢としての制度環境と管理方式の分類、また米国、英国、ニュージーランドの事例紹介を行う。

 

 

 

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