日本財団 図書館


第3章 アジア物流の発展と神戸港・大阪港の戦略対応

─港湾経営の効率化と地域経済への作用─

本章では、アジア経済の発展との関わりから、神戸港と大阪港の間の連携・合併などの発展シナリオを描く。そのためには、現行の我が国の港湾の機能メカニズムを明らかにしておかねばならない。実証分析によって導かれたそのメカニズムとは、港湾の発展が荷主の輸出物流を促進させ、地域経済の輸出競争力を向上させるけれども、輸入物流の動向は、港湾サービスの如何に関わらず、アジア経済の発展と地域との繋がりの程度によって決定されるというものである。したがって荷主にとって好ましい理想的港湾立地は、優れたロジスティクス戦略対応サービスを提供する、限定された少数の輸出用拠点港湾の存在と、そこから地方港湾に伸びたハブ・アンド・スポークのネットワーク・システムの構築である。もし全国の港湾を輸出対応用に整備しようとすれば、それは過剰投資になってしまうし、荷主の真に望むところではない。したがって神戸港と大阪港の間の連携・合併などの発展シナリオを描き、評価する為には、特に輸出物流に対する港湾サービスの戦略効果にどのような変化が見られるのかを基準に判定する必要がある。検討された選択的シナリオの中では、神戸港と大阪港を完全合併して経営したときの輸出物流に対する戦略的効果が最大になることが導かれるとともに、この時、輸入物流に対して現行のメカニズムでは中立的であった港湾サービス機能もまた部分的に改善する事が分かる。港湾経営を広域的に行い、それによってカバーされる地域経済圏の発展を海外の生産・調達拠点と連携させたロジスティクス指向型の港湾経営にこそ、日本の港湾の将来の発展の姿を求める必要があろう。

 

第4章 港湾の「競争力」と地域経済

港湾の競争力はその利用者ごとに複数存在している。したがって「誰のための港湾か?」という視点がまず必要である。この問いかけに対しては、荷主のニーズを優先するべきである。ただし荷主は大荷主と中小荷主で港湾に対するニーズが異なるため、さらに「何のための港湾か?」という視点も求められる。これについては後背地産業の振興にどれだけ役に立つのかという点が重要である。これらの問いかけから導きだされるポイントは、1]サービス重視型貨物(小口貨物や特殊な取扱いを必要とする貨物およびスピードを重視する貨物)の集荷、2]集荷圏としての直接の後背地である地元経済の優先、3]国内(とりわけ地元)サービス重視型貨物の集荷競争力の重視である。これらは地元中小企業の国際業務への進出促進等のインキュベイション機能を充実させ、貨物創出型コンテナ物流システムを構築する、即ち、後背地産業の振興にとって重要なポイントである。国際トランシップ貨物の集荷については二の次で十分である。行政側の対応としては地元中小企業育成型港湾物流サービスを充実させる港湾経営を模索することが求められている。しばしば喧伝される「神戸港の競争力の喪失」への行政的対応については、日本を含めた東アジア全域におけるコンテ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION