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このような視点の重要性については、従来から指摘されてきたと思われるが、今回の研究では平成9年度には8ヶ月間の、そして平成10年度には7ヶ月間の連続測定を通じて、中心として位置付けた「視点の重要性」を裏付ける実証的なデータを多く集積することができた。

しかしながら、目的であった「環境評価法の確立」が達成できたとは言い難い。すなわち、明らかにできなかったことが幾つかの点であったことが問題点として挙げられるが、最も大きなものとして、まず最初に、内容的な面としては、個体の生理の把握に関する判断基準のあいまいさの問題、次に、手法的な面としては、方法論の細部についての検討が不十分であった挙げられる。すなわち、内容的には、今回測定した項目が個体の生理をどの程度反映しているのか、という問題に関して質的・量的な両面で判断基準にあいまいさを残したことである。従って、本来の目的に沿えば、評価基準を具体的な項目と具体的な数値、すなわち、標準値を示すことが成果となるべきことであったのだが、これが達成できなかった。

大きな意味では、今回の調査・研究で示した考え方や今回測定した項目は、個体の生理を把握することに十分な効果を有し、環境の変動に対応した反応を示していたと考えられる。特に【貪食能の測定】では、一般的に1つの評価基準として取り扱われる貪食能を「貪食率」と「貪食指数」の2つの基準できちんと評価し、各々の基準の間で外的環境の影響、特に水温の影響に対する反応性に明らかに異なる部分があることを見い出すことができたのは、大きな成果である。また同様に、「貪食率」と「貪食指数」は、内的な要因、その中の最も大きな要因である放卵・放精に対する反応性も異なっている。すなわち、内的な要因の影響があることを考慮しつつ、外的環境を評価するための測定項目として有用である可能性が示唆された。

しかし、本研究の目的は、評価基準の作成に用いることができるようなより正確な把握であり、またそれを用いた環境評価基準を作成することである。従って、可能性を明らかにするにするだけではなく、その要素の具体的な測定への適用も明確に示さなければならない。その意味において、今回の2カ年の調査・研究の結果だけでは不十分であり、今後さらに改善や検討を行う必要がある。

またもう1つ指摘されることとして、方法論の問題がある。「環境評価法」という通り、目的は方法論の確立である。しかし、今回の研究では方法の細部を検討するまでには至らなかった。しかし、成果もみられた。測定系の確立には至らなかったものの、化学発光装置の導入によって、昨年度測定できなかった酵母の貪食刺激に伴うスーパーオキシドの生成を今回は明確に捉えることができた。生体防御能に関する重要な測定項目と考えられるものについては変更することなく、より簡易で高感度な手法の導入、あるいは方法論の一般化をはかってゆきたいと考えている。

 

 

 

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