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る。」「伝統的リーダーが社会集団からの支持を取り付け続けるためには、換金産物から生じる利益を社会集団の構成員に提供する必要が生じたのである。」「そこで、伝統的リーダーは、自己が属する伝統的社会集団での優位を保つために、植民地型官僚制の一員となったが、このことによって植民地型官僚制が収集してきたリソースを社会集団構成員に分配するシステムを構築した。」とされる。そして、ポスト植民地官僚制にあっては、アメリカ、日本等の先進国からの援助体制の成立で「モノカルチュア産業の占めている位置を援助行政が代替する」ことによって、システムが維持可能となったとされている。

そして、司馬遼太郎氏は、アジア的汚職について次のようにいわれている8)(要約)。

「かつて中国的なアジアを成立させた原理は儒教でファミリーの秩序をもって最高の価値としている。そして、一人の官吏が出れば一村は潤うのであり、汚職というのはこれは約束されたものである」。

アジア的状態というのは、それそのものが巨大な病巣のようなものだったと思われる。官僚組織を作れば平然と汚職をする。それはいわゆるアジア的な家族主義で自分が太ればいいというところがある。」

最近のインドネシアについても、読売新聞は次のように解説している9)

「三世紀余りに及んだオランダなどの植民地支配に抗して、独立の原動力となった国軍が国防・治安だけでなく、政治勢力として君臨しビジネス活動も営む、独自の「二重機能」制度は国民から一定の支持があったからこそ継続されたと言える。また、そうした支配体制を背後から支える、ジャワの伝統文化の存在も見逃せない。例えば「ゴトン・ロヨン」と呼ばれる相互扶助の精神がある。成功し功なり名を遂げた者が一族に施す姿は美徳として尊重される。これは国民の9割余りが信仰するイスラム教の原理にも通ずる精神だ。スハルト氏が一族に種々のビジネス特権を与え続けたことに罪悪感がないのも、こうした発想から抜けきれないからだろう。」

また、フィリピンでは、血縁と慣例によって結びついたクライエントリズム(親分・子分関係)を基本とする互恵義務のネットワークを形成している。

このような歴史的風土にあるアジア諸国では、中国を始めとして汚職の防止に懸命の努力を傾注しているところである。そこで、汚職防止についてアジア諸国は公務員制度としてどのような対策を立てているか整理しておく必要がある。服務規律としてはどのような規定があるのか、防止のための専担機関が設けられているかどうかを以下整理する。

【インド】 服務規律では、職務に対する「清廉さ」と「献身さ」を基本とし、次のような規定を設けている。

・ 家族の私企業への就職を保証させるため、自らの地位又は影響力を直接的又は間接的に行使してはならない。

・ いかなる目的によって、現金又は現物を求め、承諾し、寄付し、別に定める資金その他の集金を調達してはならない。

 

 

 

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