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5.3 「構造改善」─企業体質の改善─

 

5.3.1 中小造船業の産業構造

様々な産業での生産活動は、ある産業の生産物が別の産業の生産のための原材料として用いられ、その産業の生産物はさらに別の産業の活動のための原材料になるといった関係があり、これらの関連をマトリックスとして表した物が産業連関表と呼ばれるものであり、5年毎に集計がなされ我が国の産業活動の形態が公表されている。この表から各産業間を生産物(産出)と原料(投入)の関連で結びつけ、産業部門の重要の変化が他の産業にどういう影響を与えるかを調べることができる。この表から模式的に産業間の影響を示したものを図1に示す。この図の中で影響力係数とはその産業部門に対する最終需要が1単位引き起こされた際に全産業全体の生産波及効果の程度を示す指数であり平均を1としている。また感応係数はそれぞれの産業部門がどの程度影響を受けるかを見る指数である。

この図によると、造船業は感応係数は0.696であるため、他産業からの影響はあまり大きく受けないが、海運業の盛衰から影響量は小さいながらも比較的影響を大きく受けることが分かる。一方造船業は材料、部品を広範囲の産業から調達して、組み立てる産業の特色を持つため影響力係数は1.1909と比較的大きく、他産業へ与える影響は、舶用工業界を初め多岐に渡り裾野は広く、道路、橋梁などをはじめとする公共事業などよりも他産業へ与える影響は大きい産業である。売上高は他産業に比べ小さいもののこれに拘わる労働人口は大きく、特に地方での影響は大きい。このように業としての造船業は社会的影響力も大きい。

船は日本国民の生活を維持していく上で必要不可欠だが、

・ 船を日本で作る必要はないのか?

・ 船は全て輸入で賄うのか?

・ 災害・有事の際は?

等々の基本的問いかけを議論する必要もあろうが、産業連関の上流側の需要を喚起する企業へ、すなわち市場を形成する企業体質への改善が急務である。

 

 

 

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