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5.2.6 VLCC(超大型タンカー)の後利用について

VLCCの沈設による消波ブロック

70年代半ばに建造された多数のVLCC(20万重量トン以上の大型タンカー)が代替期にさしかかったこともあり、現在、大手造船所におけるVLCCの建造は活況を呈しており、中期予想によれば、(原油価格やアジア経済混乱の回復状況にもよるが)建造は2004年にピークを迎えると言われている。

一方、老朽化したVLCCは過去5年間の実績で約100隻が解体され電炉用粗鋼材として再利用されている。

四面を海に囲まれた日本。我々は豊かな海から限りない恩恵を受けているが海は平穏なときばかりではない。ときには海は異常気象を生み高い波や「うねり」、或いは地殻変動による津波などによる不幸をもたらすものである。これらの予期せぬ災害を最小限に止めるため、老朽化したVLCCの平行部(船首尾を除いた部分)を解撤せずに比較的浅い海域の海底に並べて沈設することに再利用を提言するものである。さらに、沿岸リゾート海域や漁場の保護を目的とした「消波ブロック」としての効果、或いは大型魚礁としての漁場育成効果を期待するものである。

特徴は、建設費が安い、工期が短くてすむ、石灰石や砂利などの採取による自然破壊を抑制できる。また埋設するため景観を損なうことがないことである。

当然のこととして、海洋生態系への影響など自然環境保全の配慮が必要であることはいうまでもない。建設用鉄筋材としてのVLCCの再利用に加え、この様な用途での再利用も地球資源の浪費を抑えるという観点で有効な手段であり新たな需要を創出し産業振興に貢献できる。

また、消波の効果に関する研究と実証、沈設に関わる施工法、漁場育成としての効果の程度などについて、中小の造船所が大手造船所や海洋土木業界、海洋・水産関係研究機関・大学など異業種と共同研究できれば海にこだわりを持つ者にとって新分野への展開を可能とし併せて技術力の向上にもつながってくる。

 

 

 

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