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5.2.4 アンモニア冷凍システム

近年、フロンによるオゾン層破壊が深刻化しており、フロンの使用が規制されてきている。現在使用されている代替フロンも近い将来禁止されることが決まっている。その対策として、自然冷媒等が検討されているところであるが、なかでもアンモニアが有望である。20数年前までは、船舶においてもアンモニアが冷凍用の冷媒として使用されていたが、フロンの出現とともに使用されなくなり、アンモニアを取り扱う技術者もいなくなっている。当然のこととして船舶におけるフロンの使用はできなくなる訳で、これに代わる冷凍技術が必要となってくることになる。おりしも、佐賀大学において、従来のアンモニア充填量の10分の1で同等の性能が得られる高性能アンモニア冷凍システムが開発されている。この技術を用いて船舶への適用が可能なアンモニア冷凍機を開発すれば、日本国内はもとより世界的な市場の開拓が可能になる。この技術は、まさに中小造船業・舶用工業の技術が寄与しやすい分野であり、技術規模、市場性とも、大きな可能性を有している。早急な技術開発によって、中小造船業・舶用工業の振興に寄与できるものと考えられる。以下に佐賀大学で開発されているアンモニア冷凍システムについて事例を紹介する。

冷凍機の冷媒として、20年来フロン系冷媒が主流を占めてきた国内では、アンモニア冷凍機に関する研究は、充填量に関する規制の面などより、一部でしか行われていなかった。しかし、プレート式熱交換器の採用、アンモニアと相溶性のある冷凍機油の開発などを受けて、実用化に向けた安全かつ高効率なアンモニア冷凍機の開発が期待されている。

佐賀大学では、充填量の低減及びシステムの高効率化を目的とし、プレート式熱交換器を用いたアンモニア冷凍機の研究開発を行っている。この成果として、従来のアンモニア充填量の10分の1で、同等の性能を得ている。これにより、アンモニア冷凍機の適用が拡大している。

図は、開発している実験装置のフローを示す。

凝縮器および蒸発器は、プレート式熱交換器を採用し、伝熱面積は、それぞれ4.80m2および3.84m2である。熱交換器内部において冷媒と熱源水は1-1パスの完全対向流型で熱交換する。圧縮機はキャードモーター体型単段往復圧縮機で定格出力は20kW、インバータによりモータ回転数を制御することができる。冷媒充填量は3kgである。なお、本システムと同程度の冷凍能力を有する冷凍機に多管式を用いた場合は約30kgである。

冷媒循環系(一次側)…過熱蒸気の冷媒(NH3)は冷凍機油(ポリアルキレングリコール油)と共に圧縮機で圧縮された後、凝縮器に送られ、冷却水と熱交換し、過冷却域まで冷却される。凝縮器を出た圧縮液は膨張弁で膨張し、湿り蒸気となって蒸発器に送られ、ブライン(エチレングリコール)と熱交換し、過熱蒸気となり、再び圧縮機に送られる。

 

 

 

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