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5.2.3 海水淡水化システム

21世紀は、エネルギー及び食料の確保とともに、水不足が懸念されている。このような状況のなか、海洋温度差発電技術の応用分野の一つとして、5℃から20℃の低温度差でも十分淡水が得られる高性能スプレーフラッシュ海水淡水化技術がある。このシステムは、舶用だけに留まらず、沿岸の食品工業や化学工業などの廃熱を有効に利用し、化石燃料等を利用せずに工業用水としての淡水を得ることが可能である。これらの技術は、要素技術に関して中小造船業・舶用工業の技術が寄与できる分野が多い。一方、海洋温度差発電とハイブリッド化によって、電気とともに淡水が得られるため、電気及び水の確保が困難な地域での実用化が望まれている。特に、沖縄を中心とする各諸島では、電気と共に水の確保が問題になっており、沖縄地区の現地調査においては、これらの実用化ができれば産業界の活性化と併せて社会基盤の整備という観点で地域からの強い期待が伺われた。本方式は、環境に優しいという優位性から海上に配備されるメガフロート等における淡水の確保には最適なシステムであり活用が期待される。以下に佐賀大学で開発が進められている海水淡水化システムについて技術的な内容を紹介する。

佐賀大学は、海洋熱エネルギーを有効利用するために、OTECと海水淡水化装置を組み合わせ件ハイブリットサイクルについてスプレーフラッシュ蒸発法を用いて最適化を図るシステムの開発と実験を行った。その結果液温度が30℃でもスプレーフラッシュ蒸発法を用いれば十分に蒸発が可能なことが明らかになった。

さらに、海洋温度差発電とスプレーフラッシュ蒸発式海水淡水化装置を組み合わせたインテグレートハイブリッドOTECサイクル(I-H OTEC cycle)の性能解析を行っている。そして、ジョイントハイブリッドOTECサイクル(J-H OTEC cycle)との比較を行っている。I-H OTECサイクルのほうが約33〜80%高い淡水化比を得ることを明らかにしている。

実験において、スプレーフラッシュ蒸発法について、4穴、円筒、楕円の3種類のノズルを用いて、作動流体に水道水を使用して液温度降下を測定し、過熱度、液流量を変化させた場合のノズル本数の影響について報告している。また、口径が10.0mm、長さが81.3mmの円筒ノズル1〜6本を用いて、液温度が約30℃で、過熱度、液流量を変化させた場合のノズル本数の影響についても明らかにしている。

沖永良部海域で、スプレーフラッシュ蒸発式海水淡水化装置を用いた場合のインテグレートハイブリットOTECサイクルについて検討を行い有効なデータを明らかにしている。さらに、I-H OTECサイクルでの使用を目的にして、ノズル流出液温度、ノズル材質、口径、ノズル内平均液流速、ノズル流出液流量等を変化させた場合について実験を行い、ノズル流出液温度30℃以下で使用できる一般的整理式を得ている。

 

 

 

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