日本財団 図書館


(2) 九州におけるモーダルシフト推進の条件

本年度、九州運輸局貨物流通企画課では、九州のトラック事業者にモーダルシフト推進の阻害要因を抽出すべくアンケート調査を行った。調査結果は以下の通りであった。

モーダルシフトの受け皿である「海運」及び「鉄道」は、輸送効率や環境面では優位であるものの、運賃面やリードタイムの問題ではトラック輸送に劣るため、それぞれが単独でモーダルシフトの受け皿となることは難しく、有機的に連携すること、いわゆる、複合一環輸送システムを構築していくことが、物流効率化を推進していく上で必要であり、そのためにはトラック事業者や海運船社・JR貨物及び行政が一体となって阻害要因・課題に対応していくことが必須条件である。

1] 海上輸送の整備

今回のアンケート結果から判断すると、海運部門については、コンテナ船よりもフェリー(内航RORO船を含む)を利用したトラックとの複合一環輸送への移行が期待されている。フェリーによる輸送は陸送と較べれば時間的には遅れをとるものの、有人トラックであれ、シャーシのみによる無人車航送であれ、車両の積み込み等の荷役時間があまりかからず、荷物を積み替えることなしに戸口から戸口までの一環輸送が可能であることから、比較的容易にシフトできると思われる。課題は、運賃が陸送するより割高で、運賃割引制度に工夫がないとする回答が多いところから、創意・工夫した運賃精度を導入することにより、より一層フェリー利用率は上昇することであろう。加えてフェリー船社は、長期的にトラック便を確保するため、大手トラック業者のための輸送枠をあらかじめ設定している場合もあることから、中小トラック業者や突発的なフェリー利用の場合は、満車で乗船できないことがあるなどの問題もあり、利用者の裾野を広げる意味からも改善の余地があろう。

港湾施設等ハードの問題では、大都市(東京・大阪)における港湾の駐車スペースの整備と南九州(志布志・細島)におけるアクセス道路の整備により、トラック事業者にとってより利用しやすいフェリー航路が実現することとなる。

2] 鉄道輸送の整備

鉄道貨物輸送について言えば、九州では福岡ターミナル駅、本州では東京・宮城野等ターミナル駅への拠点間輸送を除けば、やはり時間がかかりすぎる。しかしながら関東方面への輸送時間は、フェリーに優っており、関東以北へはトラック輸送にも十分競争力を有しているものと思われる。

また、コンテナ荷役の際の荷傷みが、トラック事業者にとってはモーダルシフトを進めるうえで大きな阻害要因となっており、パレットの統一も進んでいない現状からして、モーダルシフトの対象貨物については今後とも一定の制約が残ると思われる。

JR貨物の経営合理化策として貨物取扱駅が減少していることも、中九州、南九州のトラック事業者にとっては鉄道輸送への移行を阻害している要因の一つと考えられる。加えて自然災害等により発生した輸送災害に対して代替輸送体制を通運業者と協力し確立しておくことが、トラック事業者の信頼性を勝ち得ることとなろう。

ちなみにJR貨物では、平成11年度より3年間の予定で国及び北九州市の支援を得て、門司貨物ターミナル駅を「九州のハブ貨物駅」とする施設整備計画がある。現在、福岡ターミナル駅が九州のハブ貨物駅としての役割を果たしているものの、同駅はそのための機能が十分そなわっているとはいえず、また同時に福岡市周辺の貨物取扱駅としての役割も併せもっていることから、その能力は既に限界に達しており、福岡以南の輸送力に問題が生じている。従ってこの整備計画が完了すると、福岡ターミナル駅は後者の機能のみとなり、福岡ターミナル駅に集中している列車が分散できるため、九州全体でもより機能的な列車運行が可能となり、モーダルシフトの受け皿としてより充実したものとなるであろう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION