3) 現場における分散剤の簡易試験法
分散剤については、性能試験において一定の性能(分散率)が得られたとしても、実際に処理しようとする油との相性によって、効果を発揮するか否かといった課題がある(分散剤と油の油種との関係に起因するもの)。また、性能試験は、分液ロートなどの閉鎖された場で行われるものであることから、実海域との違いによる再現性の課題もが存在しており、使用に当たっては、流出した油への分散効果を、事前に確認することが必要である。
このことに関し、米国やカナダで用いられている、分散効果を確認するための現場での簡易な試験法について調査したところ、両国とも、こういった方法はあまり用いられていないとのことであった。我々の質問に対する各機関の回答は、次のとおりである。
1] 米国
イ 環境保護庁(環境対応チーム・センター)
我々は、簡易試験法については承知していない。分散剤はあまり使われていないのが実状であり、それは、法的に禁止されていないにもかかわらず、多くの人が、使用が禁止されていると思い込んでいるからである。簡易試験法についてもあまり知られていないのではないかと思う。
ロ 沿岸警備隊 (NSFCC)
政府に承認されている分散剤には4種類のものがあるが、そのうちの二つが日本製である。このため、使用するのは、アメリカ製のCorexit 9500かCorexit 9527であり、二つのうちから一つを選ぶのに、わざわざ沖合から油を採取してくるのは大変な手間である。それよりは、どちらかを使ってみて、効き具合をみる方が合理的である。
2] カナダ連邦環境省(環境技術センター)
簡易試験法に二つのものがあるが、精度が低く、あまり使われていない。
4) 分散剤の使用状況
米国でもカナダでも、油流出事故の際に行われる具体的な防除活動は、地域毎の緊急時計画(Area Contingency Plan)の中で事前に決められている。これは、国家緊急時計画の下に、地域の実状を考慮して作成されるものであり、分散剤についても、その海域毎に使用するか否かが事前に決められるものである。米国では、全国の10地域に設けられた地域対応チーム(RRT : Regional Response Team)により、分散剤の使用が事前に決められている海域では、油流出事故の際に分散剤が使用されることになる。このような体制の下での米国とカナダの分散剤の使用状況について調査したところ、次のとおりであった。
1] 米国沿岸警備隊(NSFCC)
地域によってPreapproved Planが異なるが、基本的には、機械的な方法による回収が先であり、分散剤の使用については、まだまだ消極的である。