2] カナダ
イ 沿岸警備隊(太平洋管区)
分散剤については、これまで使用したことがない。C-130(輸送機)から散布できるようになっているが、訓練で使用した程度である。
分散剤は、それが連邦環境省によって承認されているものであることが必要であるほか、使用の都度に、使用することについての許可を得る必要がある。使用する海域については、水深や距岸を考慮する必要があるが、一般的な規制はなく、個々の状況によって許可されるか否かが決められている。
ロ Burrard Clean Operations(油防除事業者)
油防除作業は、専ら機械的回収によって行っており、分散剤は使用していない。洋上焼却についても同様である。以前は、油防除資機材として分散剤を保有していたが、この地域(カナダ太平洋海域)では、使用の許可がなされたことがないので、有効期限が切れた際に資機材としての保有を止めている。分散剤は、連邦環境省で製品が承認されていても、実際には使用が許可されないので矛盾していると思う。分散剤の使用も洋上焼却も、この地域の緊急時計画に記載されていない。
(3) その他
1) 油防除資機材導入時の機種選定基準
油防除資機材を導入する際の、機種等の選定基準について調査したところ、カナダ沿岸警備隊では、担当者が、米国の油・有害物質環境影響大型テスト・タンク(Ohmsett)に行って試験をし、その結果によって機種を選定しているとのことであった。
なお、導入の際の基準については、公表していないとのことである。
2) 寒冷海域における流出油の防除手法
寒冷海域(氷海域を含む。)において有効とされる流出油の防除手法について調査したところ、次のとおりであった。
なお、米国沿岸警備隊(NSFCC)からは、時間の都合により、聴取することができなった。
1] 米国
イ 環境保護庁(環境対応チーム・センター)
寒冷海域では、機械的回収よりは、洋上焼却の方が効果的であると考えられる。油の防除のための重装備を遠隔地まで運ぶよりは、風上から火を付けて焼却した方がよいと考えている。分散剤の使用については、寒冷海域では反応(微生物による生分解)が遅く、さらに、氷海域ではかく拌も起こりにくい状況にある。そのような中で、敢えて分散剤を使用することの必要性はないのではないか。氷自体が良い防火壁になるので、現場での焼却が適している。
現場が、経済圏に近い場所などであれば、焼却による影響を考慮する必要がある。保護すべきものの優先順位を決め、機械的回収、焼却処理、化学的分散、バイオレメディエーションといった手法について、総合的に得失を勘案して、どの方法によるかを決める必要がある。