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MDPC法では、自己かく拌型の分散剤の試験法として、緩やかな波動で乳化・分散する方法を採用する必要があり、振とう時間がある程度長いものになると考えられる。調査の結果では、振とう時間が30分の時点で、分散率がほぼ一定の割合で増加する領域から顕著な増加が認められなくなる領域へ移行する様子がうかがえており、この結果から振とう時間を30分とした。

振とう時間 30分

 

8) 静置時間

静置時間は、容器の種類、海水量及び油と海水の比と複合する問題である。

Dr. Fingas等の研究によれば、分散率は、静置時間が増加するにつれて低下するが、一定の時間を経過すると分散率にあまり大きな変動が見られないことが確認されている。静置時間は、操作上最も重要な因子であり、特定の油と分散剤との組合せでは、この影響が1桁にも及ぶことがある。また、異なった装置を使用した試験でも、この影響は変わらないことが判明している。

調査の結果では、静置時間が10分を経過するあたりから、静置時間の増加に伴う分散率の変化がほぼ一定の割合となっており、粒径の大きな粒子が浮上して、乳化層は、ほぼ安定した状態の粒子で構成されている様子がうかがえている。このことから、静置時間を10分とした。

なお、舶査第52号による試験法では、静置開始から30秒後及び10分後の分散率の値を計測しているが、30秒後の分散率は、不安定な粒子をも採取していることとなり、水中に安定した状態で浮遊する粒子を採取して計測するのが望ましい観点からは、ある程度の時間が経過してから計測する必要があるといえる。このため、本試験法では、静置開始から30秒後のものについては計測しないこととした。

静置時間 10分

 

9) 乳化層の採取量

乳化層の採取量は、分散率の値に影響するものと考えられるが、この値は、表2-2-11に示すように試験方法によってまちまちであり、多いものでは海水量の60%を採取している。

調査の結果からは、分液ロートの上層部ほど分散率の高い結果が得られており、分散した油は、下層ほど小さな粒子となって水中で長く浮遊し、安定した乳化層を形成しているのに対し、上層では、粒径の大きな粒子が浮上して、不安定な層を形成しているために、油分量が多く分散率が高い結果を示すものである。このため、乳化層の採取量が多ければ、不安定な粒子を多く取り込む結果となることや、油分を抽出する試薬の量が多くなるなどの問題がある。調査の結果から、採取量を海水量550mlに対して100ml(18.2%)とし、採取位置を最下層とした。

採取量 100ml

採取位置 最下層

 

 

 

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