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4.2.4 実船による海事衛星通信の最適利用に関する実験

(1) 通信実験の目的

情報通信は日進月歩の発展を遂げ、陸上においてはパーソナルコンピュータとネットワーク技術を駆使したマルチメディア通信が盛んである。海運界においても情報を集約できる環境の整備が進められている。一方船舶においては、国際経済環境の変化に対応して運航要員の混乗化が進み、従来からの本船による本船の自主管理の形態から、陸主導の船陸一体管理へと移行しつつある。

船舶の運航に当たり、分散化された船社機能の実行責任の在り方を求めて、スタートしたISMコードや今後より一層の強化が図られるPSCに対応するためにも、船舶と陸上組織との緊密な管理・支援体制の構築が必要であり、また、GMDSS制度の施行に伴い専従の通信士が不在になる等、海運界を取り巻く諸般の状況変化に応じて、新しい情報通信技術の船舶運航支援面への利用が期待されている。

本実験では、船と陸間の通信手段として、全世界を対象に移動体通信サービスを提供している海事衛星通信(インマルサット通信)に着目し、その利用法を条件別に比較・検討して船陸間通信における海事衛星通信の最適利用方法について考察を行うこととした。なお、平成10年9月よりサービスを開始した、低軌道を周回するイリジウム衛星通信については、実験実施の時期及び設備の関係から実施しなかった。

 

(2) 通信実験の実施項目

1] 海事衛星通信回線を使用して、船陸間でファックス、電子メール及び通信ソフトによるファックス送信実験を行う。

2] 受信したファックス画像の画質・電子メール送受信の難易度の評価、通信所要時間の計測・通信料金の算出、送受信時の船位及び衛星の仰角等を算出記録する。

3] 各海事衛星通信回線における、上記2)の結果を比較・検討し、船陸間における海事衛星通信の最適利用方法を考察する。

4] 送信用原稿を圧縮化・暗号化を行って、送信原稿のボリュームの比較を行うと共に、電子メール及びファックス機による送受信実験を行う。

 

(3)通信実験の方法

運輸省航海訓練所及び同所が運航、管理する練習船(青雲丸、銀河丸、北斗丸)の協力を得て通信実験を実施する。

実験に要する通信費は、日本財団の補助金を受けた当協会が負担(詳細については航海訓練所と(株)日本海技協会の間で別途定める。)するが、国の施設を使用して実験を実施する関係等から、運輸省航海訓練所と「情報システム調査検討委員会」の事務局を担当する(株)日本海技協会が、平成10年4月1日〜平成11年3月31日の間共同研究実施の協定を締結して、委員会及び分科会の指導のもとに通信実験を実施する。

なお、実験方法の詳細及び評価方法等については、実験実施方案を運輸省航海訓練所で作成し、事務局が委員会に提出して同委員会の了承を得た後、同方案に従って通信実験を実施する。

また、実験終了後のまとめについても、運輸省航海訓練所で行い、それを受けて事務局が「情報システム調査検討委員会報告書 その2 海事衛星通信の最適利用に関する調査」(案)を作成し、委員会の審議を経て成案を得る。

 

【備考】: 実験の実施状況及び実験結果については別冊「情報システム調査検討委員会報告書 その2 海事衛生通信の最適利用に関する調査研究」を参照されたし。

 

 

 

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