(3) インターネットと海事情報
最近の高度情報化の進展は、情報技術の利用で社会全般に情報革命といわれるような大きな影響を及ぼすようになってきた。情報革命の結果の一つは、ネットワーク化という言葉で特徴づけられる。情報通信技術の発達により、人々の間の情報的結びつきは、ますます複雑で多様になり、あらゆる方向に情報が伝わるようになっている。特に、インターネットの出現により情報革命が身近なものと感じるようになってきた。インターネットは、オープンさと自由さとによって成功したネットワークであり、膨大な情報(コンテンツ)と全世界で数千万人にのぼる膨大な利用者とを包含し、現在の発展を続けている。
船舶に関しても、運航システムヘの高度情報化の波は、国際競争力の維持と安全性の面から避けることはできないものとなっている。
このような状況において、船舶に関する情報システムが円滑に機能するためには、
・ 必要十分な情報の獲得
・ 情報の適切な処理
・ 情報が必要な場所で利用
などの問題を解決しなければならない。情報の適切な処理は、ソフトウェアの問題であり、運航者のノウハウを結集することにより解決が可能である。情報が必要な場所で利用されるためには、通信機能の充実により解決が可能である。しかし、必要十分な情報の獲得については、
・ 情報源の把握
・ データから情報の選別
・ 情報の正確性の判断
などが要求される。
情報源の把握は、インターネット上の情報源が指数関数的に増大しており、的確な情報源を探し出すのに多くの労力を要するようになってきた。さらに、海事産業は関連する業界が多く、それらの業界が持つデータを利用しやすくする工夫が必要である。それには、運航者とその周辺の人を支援する公益団体や関係機関が中心となって、情報収集支援を行う環境作りを進める必要がある。また、WWWブラウザにエージェント指向の情報検索技術を導入することも必要となる。
インターネット上には莫大なデータが存在するが、運航者や情報利用者にとって価値を見出すことができるデータ、すなわち情報は僅かである。データから情報の選別とは、その価値判断をどのように、どの段階で行うかという問題である。現時点ではこの問題をソフトウェア的に完全に解決する方法がない。そこで、多種多様な運航業務を情報収集の観点から分析、作業マニュアル化することからはじめるべきであろう。
情報の正確性の判断とは、インターネット上に公開されているデータがすべて認定されていないため、利用者の責任において情報利用をしなければならない問題である。この問題はインターネットが性善説に基づいて運営されていることに起因する。そのため、利用者側で何らかの対策を講じなければならない。その対策の一つとして、運航者とその周辺の人を支援する公益団体や関係機関が中心となって、情報源の認定を行うことがあげられる。
次世代のインターネットは、
・ 高速ネットワーク接続(現在の100倍〜1000倍)
・ リアルタイムサービス(高品質テレビ会議など)
・ 次世代アプリケーション(遠隔操作など)
を目指し、家庭、学校そしてビジネスの場において有用な、新たなマルチメディアサービスの導入を加速させるものとなろう。海運界においても業界の特徴を考慮した、この情報化の流れに沿ったシステム開発が進められるべきであろう。また、技術革新に伴い運航者の情報に対するリテラシー教育の充実を計っていくことがますます重要となるであろう。インターネットのように、使い勝手の良い仕組みは悪用も容易である。このため、情報システムの運用においては、組織の内外の人に係わらずデータの不正利用、不正改ざんなどに十分配慮する必要がある。しかし、この問題は最終的には人の倫理観、道徳観の問題であり、情報リテラシー教育はこの点についての考慮がますます重要になろう。