シミュレーション機能は、運航者の意思決定内容を実行したときに、どのようなことが起こるのかを事前に模擬できる機能である。例えば、航海計画や避航計画を立てたときの評価などを事前に行う。
5] 通信機能
通信機能は、次の三つのサブ機能から構成される。
・ 船内通信機能
・ 船外通信機能
・ 暗号処理機能
船内通信機能は、通信サーバーを用いて、船内LANを利用した電子メールや船内連絡、分散された機能間の情報通信など行う。また、船体を制御する情報の通信やセンサー情報の通信を行う。
船外通信機能は、陸船間の情報伝達として衛星通信を利用するための機能である。通信は、自船の運航状態を示すデータの船社などへの送信と陸上からの運航支援に関する情報の受信を行う。
暗号処理機能は、平文の暗号化および暗号文の復号化を行う機能である。船内に限らず陸上からの重要情報をハッキングされても解読が困難なように、通信路に流す情報を暗号化する必要がある。
(2) 船舶情報システム構築の要素技術
船舶情報システムの構築に必要または導入を検討しなければならない情報処理技術を、システム機能別に整理したものを表4-1に示す。表中の○印が必要となる要素技術である。
知識ベースとは、運航者の知識を導入した知識ベースシステム技術をいう。
パターン認識とは、入力と出力の関係を一意的に決定できる領域の問題に対して、あらかじめファームウエア化しておく技術をいう。
学習とは、ニューラルネットワークに代表される学習機能をシステムに持たせ、システムを運用するにつれて学習が進み、より人間に近い動作を行えるようにする技術をいう。
エージェントとは、エージェント指向コンピューティングをいう。エージェント指向とは、何を処理するべきかを自ら判断し、実行できるソフトウェアモジュール(エージェント)を使ってシステムを構築する考え方である。エージェントはデータ、データを扱うための手続きといったオブジェクトと同じ機能に加え、データや手続きを状況に応じて適切に使えるようにする知識ベースを持つ。複数のエージェント同士が協調して動作する機能やエージェント自身が機能を向上させる学習機能をなどを持たせる場合もある。また、ネットワーク上を移動して運航者が要求する情報や仕事を実行するネットワークエージェント技術がある。
音声処理とは、システムの入出カインタフェースとして利用される技術である。入力には音声認識技術、出力には音声合成技術が必要である。この他に、警告音などの音によるインタフェースがある。
VR(Virtual Reality)とは、仮想現実と訳され、現実感をともなった仮想的な世界をコンピュータの中に作り出す技術をいう。コンピュータ画面に立体視コンピュータグラフィックスで表示された3次元物体を仮想的な手(データ・グローブ)を使って現実に近い感覚で触ったり、持ち上げたりすることができる。航行環境の認識やシミュレーションのユーザインタフェースとして利用できる。