[舶用課題1]] 企画・提案力の強化
経済のグローバル化が急速に進む中で、自動車産業をはじめとした産業分野では、これまでの安定的な取引関係・系列関係が崩壊し、企業間競争が激化している。一方、今回行ったアンケート調査では、造船所、舶用工業事業者ともに、従来からの安定した取引関係を保持する意向が極めて強く現れている。こうしたことから、中小造船・舶用工業では他の産業に比べて、取引先に対して積極的な企画・提案を行ったり、新たな取引先を開拓したりする風土が培われていないといった面が指摘されるところである。
こうした中、大手の事業所の中では、自社の生産システムなどに関する改善提案を呼びかけるなど、下請・関連企業からの提案意欲を引き出そうとする試みも見られる。今後、舶用工業でも競争が激化していくことが予想されることから、取引先のニーズを積極的に吸収し、製品の企画・提案力を高めていくことが必要である。
[舶用課題2]] 製品開発力の強化
舶用工業の業種は多様であり、企業規模もさまざまである。中国地区にも、業界でトップクラスの技術と売上規模を有し、開発スタッフを常時抱えているような企業もあり、これらの企業では、舶用部門はもちろん、多角化の分野でも積極的な技術開発・製品開発を行っている。しかし、こうした企業は中国地区でもごく少数であり、多くの舶用工業事業者は、大手造船所や規模の大きな組立メーカーのもとで下請生産を行っている。また、非常に優れた加工技術を持ち、自動化設備も積極的に導入している企業でも、自社製品を持っている企業はほとんどないのが現状である。
こうした状況は、今回のアンケート調査において、舶用機器の受注を受ける際に重視されていると思われる点として、「新製品の開発・提案力」を挙げている事業所は極めて少なかったことからも窺える。しかし、今後は欧州や韓国、中国などとの国際競争もますます激化していくことが予想され、厳しい競争条件の中で事業を維持していくためには、他の企業とも連携しながら、ユニット化・モジュール化した製品の開発や、自社ブランド製品の開発などにも積極的に取り組んていくことが求められる。