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IV. 中小造船・舶用工業を取り巻く環境の変化

 

中小造船・舶用工業では、これまで船腹需要の波にさらされつつも、右肩上がりの経済、安定した顧客関係、少ない国際競争、政府による強力な指導・対策のもと、比較的安定した事業環境の中で経営を続けてきた。しかし、近年これらの環境が急速に崩れつつあり、中小造船・舶用工業においても、新たな事業運営の構築に向けた意識改革を迫られている。

一方、環境変化の中には、社会資本整備の進展や、サポート体制の充実、新たなビジネスチャンスの拡大など、中小造船・舶用工業の事業運営にとって追い風となるものもあり、中小造船・舶用工業が今後新たな事業運営を進めていくためには、まずこれらの環境変化を十分に認識する必要がある。従って、本章では、中小造船・舶用工業を取り巻くこれらの環境変化について、プラス面、マイナス面を合わせて概観した。

 

1. 社会・経済環境の変化

 

(1) 全国的な環境変化

1] 製造業の成長鈍化、サービス経済化の進展

戦後、わが国の高度経済成長を牽引してきた製造業は、第1次石油ショックを契機に安定期に入ったが、近年、工場の海外進出による空洞化現象が進み、平成3年をピークに従業者数、出荷額ともに大きく減少している。

一方、サービス業はこの間も着実に成長を続け、平成7年からは製造業の従業者数を上回り、わが国最大の産業となった。また、第3次産業の中でも、ものの生産に関わりの深い卸売業や運輸業が停滞する一方、通信業やサービス業など、ものの生産との関わりが比較的薄い産業は成長を続けており、サービス経済化が一段と進んでいる。

 

全国の製造業従業者数及び製造品出荷額等の推移

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(注)1950年〜1980年は全事業所、1981年〜1995年は4人以上の事業所。

(資料)通商産業省「工業統計表」

 

 

 

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