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3.5 クランク軸のねじれ角度の分析と演算処理方法の検討

クランク軸の自由端と出力端の間(ここでは二つのセンサの間)の相対ねじれ角度は、たとえ各シリンダ毎の出力トルクが等しくても、それらのトルク作用、点と出力側センサまでの軸有効長さが異なるためシリンダ毎に違った値になる。したがって、実測された各シリンダのねじれ角度波形そのままでは比較できない。あるシリンダに異常が発生したとき、クランク軸の変動トルク波形を監視していてその異常シリンダがどのシリンダであるかを判断するには、全てのねじれ角度が同じレベルで比較できるようにしなければならない。そのために、シリンダ毎に異なる軸有効長さを正確に算定し、重み関数として導入して、計測されたねじれ角度を補正することとした。

 

3.5.1 クランク軸の有効長さの算定

クランク軸の有効長さはクランクアーム部を、ねじれ剛さが等価で断面積が一様な中実丸軸、いわゆる等価軸長さに換算して評価する必要がある。この等価軸長さへの換算方法として何種類かの計算式が提案されているが、適用する計算式によって等価軸長さが多少違ってくる。本試験研究では、機関が正常状態で運転されているときのクランク軸ねじれ角度をベースとして、等価軸長さを逆算した。その結果、上述の計算式による計算結果のばらつきの範囲内にあることが確認された。したがって本報告書の中では計測されたクランク軸のねじれ角度から求められた等価軸長さを軸の有効長さとして使用することとした。

 

3.5.2 往復質量慣性力によるトルクの分離

本研究では、運転中のシリンダ内ガス圧力の異常状態の監視を目的としている。計測されたクランク軸のねじれ角度にはピストンや連接俸等往復質量の慣性力によるトルクの作用によるねじれ角度成分が含まれている。従って、この成分を除去しシリンダ内のガス圧力だけの成分にしたほうが診断精度が向上することになる。往復質量の慣性力によるトルクは(2.4)式により計算され図14に示す。

 

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図14 慣性力波形(3シリンダ合成計算値)

 

3.5.3 計測波形とシミュレーションとの比較

図15 は計測されたねじれ角度波形とシミュレーションにより求められたねじれ角度波形を比較したものである。実測波形にはねじり振動成分が含まれているものの、両者の波形の基本パターンは良く一致していることがわかる。

 

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図15 計測波形とシミュレーションとのねじれ角度比較

 

 

 

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