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(2) 人作り・制度造り支援

(a) 総合政策支援

市場経済化を目指す越の基本政策に関する政策オプションに関して、日越の学識経験者や実務家が共同研究をすることが、1995年8月、経済協力局服部審議官(当時)と越計画投資省フック次官との間で合意された。日本側の研究チームとしては一橋大学の石川 滋名誉教授、越側の研究チームとしては計画投資省開発戦略研究所のタイ副所長が中心となり、マクロ経済政策、農業・農村開発政策、AFTA・APEC・WTO加盟に向けた産業政策、財政金融政策、国営企業改革政策等についての調査研究を進めてきた。また、特に1995年度は越が5ヶ年計画(1996〜2000年)のとりまとめをしていたことから、5ヶ年計画草案に対する緊急提言もおこなった。これらの研究における、主要な提言のいくつかを以下に紹介する。

・ マクロ経済成長目標として、当初は年平均14〜15%の高成長を目標設定していたが、9〜10%の安定成長を目指すべきである。

・ 農業・農村開発においては、農産物の多角化、灌漑による収穫の増大、市場動向をにらんだ出荷による農民収入の増大、農村部での軽工業の振興、これらを推進するための農村金融の充実等を重点的に検討されるべきである。

・ 産業政策としては、国際的な貿易の自由化を念頭において、段階的な自由化のシナリオ設定とそのための産業競争力強化政策を検討するべきである。その過程においては、輸出競争力のある産業、国内市場において輸入品に対して競争力のありそうな産業、輸入品に対する競争力のみこめない産業に整理することが重要である。

・ 大規模な設備投資を伴う産業については、フィージビリティを慎重に検討しながら進めることとし、当面は労働集約的で投資の少ない産業を振興させる。

(b) 法整備支援

1996年11月の合意に基づき、越の民法付属法令やその他の法律整備について、長・短期の専門家派遣や毎年20名程度の研修員受入、機材供与等をパッケージとした技術協力として実施している。日本側は、上智大学の森島教授を総括として学識経験者や法務省が、越側は司法省が窓口となり、同省や国会事務局、検察などの関係者に対する協力を実施している。

(c) ホーチミン国家政治学院に対する支援

同学院は越政府と共産党の共管の教育機関であり、政府の次官以上に昇格する者は、同学院で教育を受けることが必要条件とされている。同学院は1995年に、日本研究チームを発足させ、日本の社会・経済・文化等を研究することとなった。これに対応するために、1995年から3年間、毎年10名の研修員を我が国に受け入れてきている。

 

 

 

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