もう一つは、各機関独自の会計によって支給するボーナスである。本当に忙しい人は、ある程度副業が制限されることもあるので、各機関が独自に財源をプールし、これを忙しく働く職員にボーナスとして、本給の他に毎月支給しているのである。
JICAの調査団のカウンターパートとして本格的に働くとなると、どうしても副業に影響があるので、ヴィエトナムの慣習上は、職場の責任者はボーナスをカウンターパートとして任命した職員に支払わざるを得ない。しかし、職場によっては、この財源がないのである。ボーナスの財源は政府から公式にでる予算ではなく、各職場が独自にプールした資金がもとになっている。このような現金収入の少ない職場は、カウンターパート職員のボーナスにどうしても困ることになる。そこで、JICAの調査団にカウンターパート手当を要求し、S/W協議が紛糾するのである。
これは、現地駐在員としてはなかなか頭の痛い問題であった。ヴィエトナム側に立って、長い目で見るとき、そもそもカウンターパート手当を外国からもらうということは、良くないとは思われる。実際、第三国コンサルや国際機関の多くはカウンターパート手当を支給しているようであり、その結果、一部のヴィエトナムの調査機関はカウンターパート手当を稼ぐために、外国の援助をもらうというように本末転倒の現象が起きている。したがって、我が国がカウンターパート手当を出さないという原則を持つことは、良いことと思われる。しかしながら、短期間で見ると、職員それぞれの生活がかかっていることも確かであり、我が国だけカウンターパート手当を払わないと、優秀な人材が集まらず、技術移転もままならないということになる。
ヴィエトナム政府全体としてみると、公式には税収がそれほど増えていないようであり、他方インフレを抑制するために行政経費を抑制していることから、カウンターパート手当を付けるのは、そう容易ではなさそうである。(そもそも、ヴィエトナムのハイレベルにこの問題があまり認識されていないことが問題なのだが。)他方、このカウンターパート手当の問題が、技術移転等についての大きな障害になっていることも確かである。すぐには解決するのは難しいかもしれないが、今後の改善を切望することの一つである。
3.2 我が国の経済協力
(1) 概観
我が国は、1992年のODA再開以降、1994年には経済協力総合ミッションを派遣し、ODAの基本方針として以下の5つの重点分野を設定することを確認している。
・ 人作り・制度造り支援
・ 電力・運輸
・ 農業
・ 教育・保健・医療
・ 環境
その後、この基本方針に則り実施されてきている主要プロジェクトを以下に説明する。