においては、先行して調査計画している分だけそのコンサルタントが有利になるのである。実際に、ある第三国コンサルなどは、その国の大使を介して日本大使館にアポイントを取り付け、自分はヴィエトナムの発展のためにカを尽くしてきたので、資金支援は日本に期待する旨を延べに来る方までいた。こうなると、またしても、「日本はカネさえ出してくれればよい。」ということになってしまう。
伝え聞いた話なので、真偽のほどは分からないが、ある第三国コンサルは、ヴィエトナム政府に対して、円借款を借りると返すのが大変だから、まずはBOTを目指したほうがよく、自分が投資家を集めてくるとまで言って、案件の調査計画業務を獲得しているとのことだそうである。また、ある第三国コンサルは、すっかりヴィエトナムに根を下ろして、自国の無償援助を請け負ったり、世銀やADBの仕事を請け負ったりなどして、既に5年以上もヴィエトナム国内で仕事をしているとのことである。
BOT事業は民間資金を呼び込んで効率的な運営ができる可能性があるという点では長所もあるとは思われるが、社会開発の基礎となるインフラ整備のスケジュールが、民間投資の集まり方や、出資者の都合に左右されてしまうという欠点もあると思われる。ヴィエトナムでは、結局のところ、多くの案件がBOTがらみで調査計画されているために、全体として、例えば交通セクターの開発の中で個別案件の重要度をランク付けするという重要な政策策定が空洞化しているように見受けられた。このため、農業、工業等の産業開発にしても、インフラ整備の見通しが立たたず、ヴィエトナム政府が切望している外国投資の誘致も進まないという結果になっているように思われる。
【カウンターパート手当】
3年間の任期中、開発調査を担当したことから、直接立ち会ったS/W協議だけでも9件の協議に立ち会った。そのような協議において、殆どの場合に問題になるのが、カウンターパート手当である。我が国の開発調査においては、被援助国側の自助努力を促すために、開発調査を実施する日本側の調査チームと共同作業する相手国政府の職員(カウンターパート)は、相手国政府の負担で手当することとなっている。
しかしながら、ヴィエトナムでは、財政事情が厳しいことから政府職員の給与をここ数年間据え置いてきているうえ、著者の滞在した3年間では年末のボーナス(給与1ヶ月分相当の金額で、人々はこれで旧正月の準備を賄う。)すらカットされるという状況になっている。経済成長に伴う物価上昇により、ハノイ市内でも平均的な1世帯がある程度の生活を送るには、月100ドル以上は(ホーチミン司ではこの倍はかかると言われている。)必要だそうであるにも係わらず、政府の局長級でも月給は70ドル程度だという。また、通勤に用いているバイクを買うには、2,400ドルもの大金が必要である。著者も、一体どうして、あれだけ多くの人がバイクが買えるのか不思議でならなかった。
そして、恥ずかしながら赴任して1年半たって、漸くその謎が解けたのである。一つは、副業である。多くの人々は副業に精を出しており、そこからかなりの収入を得ている。