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以上のような事情で、この会社では当初予想の倍の日本人スタッフを送り込み、日常業務の管理を行っているとのことで、経費が予想を大幅に上回っているそうである。

次に、日系の自動車会社にも足を運んでみた。ハノイ近郊の自動車工場では、部品の仕入れ、完成車の出荷に関する輸送に困っていた。まず、ヴィエトナムで自動車を組み立てるには、日本から部品を輸送する必要がある。しかしながら、部品の輸送に係わる諸手続が煩雑なことや輸送の不確実さのために、安定した輸送が確保されず、工場内に部品のストックヤードを設け約1ヶ月分の部品を工場内に抱え込まざるをえないとのことであった。また、完成車の輸送に関しては、ヴィエトナム北部のハノイの工場から南部の経済中心地であるホーチミン市に完成車の輸送手段を検討すると、コストの安い内航海運、鉄道輸送に問題があり、1台のトラックに完成車1台を積んで輸送せざるをえないとのことで、1台当たり600ドルのコストがかかるそうである。他の外資の中には、ホーチミン市近郊に工場進出したところもあり、そのメーカーとの価格競争上は大変不利になっているとのことであった。

 

【首相決定は、たくさんあるが・・・】

ハノイ近郊の開発をどうするのか、ヴィエトナム関係者に聞いてみると、近郊にいくつも工業団地開発計画がある。現在は、水田地帯ではあるが、全て首相決定されているとのことである。また、この他にも、いろいろな地方に出張した機会に地元の人民委員会でこの地方の開発をどうするのかと聞くと、必ず、どこでも工業団地開発計画があり、これまた、首相決定されているとのことであり、一体、こんなにたくさんの開発計画があっても、どこからどう手を着けていくのかという思いを禁じ得なかった。

結局、「首相決定」というのはヴィエトナムでは相当重い決定ではあるものの、予算の裏付けがあるわけではなく、とりあえず計画のみを許可したということでしかないと言うことがようやく判明した。しかしながら、インフラ開発を計画的に実施して行くには、非常にやりづらいしくみであり、実際に日本人民間投資家たちも困っているようであった。更に言えば、そもそも、我が国のように関発計画を基本構想から5ヶ年計画、整備計画、年次実施計画というように段階的に意志決定していく仕組みそのものが、整備されていないと言うことが判った。

 

【土地バブル】

現在では既にもうはじけてしまったかもしれないが、2〜3年前は、ヴィエトナムも日本のような土地バブルが大きく膨らんでいた。ハノイ市内では、1平方メートル当たり10万円が相場であり、さらに主な道路に面した土地は1平方メートル40万円もするとのことであった。このため、ヴィエトナム・ブームに乗ってヴィエトナムに進出してきた企業は、例外なく不動産の手当に困っていた。何しろ、事務所も住居がそもそもないのである。また、工業団地の土地の値段も異様に高く、北部のある工業団地では、25年の定期借地権を手に入れるのに1平方メートル当たり1万円もかかっていた。

 

 

 

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