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天然資源は南シナ海に油田があり、鉱区の採掘権を外資に売って採掘させているが、今のところ商業生産を行っているのは日本(三菱石油)とロシアだけである。また、北部のクアン・ニン省では無煙炭を産出するほか、石灰石が取れ、今後セメント工業は内需が見込まれることから有望視されている。この他、金、リン、鉄鉱石、ボーキサイト等の鉱物資源の存在が確認されている。しかしながら、確認されている限りでは鉱床の比較的小さいこと、鉱床から港湾までの輸送インフラが未整備なことなどから、商業採算性があるとは言い難い状態である。

主要な産業は農業であり、全人口の80%以上が農民で、主に米を作っている。北部では2期作ができ、中部以南は3期作が可能である。中部高原地帯では、ゴムやコーヒーを産出し、輸出されている。農産物の流通は、基本的には国営農業商社が中心に行っているが、農民が都市の市場に自主的に農産物を運んで売ることは認められているようであり、また、ヤミ業者も存在するようである。

水産資源としては、遠洋には魚影が薄いため近海及び沿岸漁業が中心で、イカ、エビ等は日本等へ輸出されている。しかしながら、近年では乱獲によって水産資源の将来的な枯渇が懸念されているほか、沿岸部に漁業への就労を求めた流民が増加しており、衛生状態が悪化しつつある。水産省は、国営水産会社の育成に興味を持っているものの、このような問題についての問題意識は低く、行政的な取組が不足している。

初等教育はかなり普及しており、識字率は90%あり、他のLDC諸国と比べると高い水準といえる。ハノイ大学やハノイ工科大学では世界数学オリンピックや物理学オリンピックで金メダルや銀メダルを獲得するようなレベルの学生もいる。しかしながら、これらの大学の施設は貧弱であり、越最高水準のハノイ工科大学の化学実験室では、ガスクロマトグラフィの装置もなく、質量の計測には化学天秤を使うような状態である。また、ドイモイ政策によって個人の自由度が拡大した結果、教員も自宅で私塾を開くようになり、本業のほうがおろそかになったり、また、私塾に通う生徒、学生にのみ高い点を付けたり、裏口入学・卒業がはびこるなどの問題も生じつつある。また、学生が外資系企業への就職を指向して外国語学科や経済・経営学科等を志願する傾向が高まり、従前は越が得意としていた数学や工学系に優秀な学生が集まりにくくなってきている。

厳格な社会主義体制から市場経済を目指す越にとって、目下、法律の整備が焦眉の急となっている。従前は、共産党の指導の下に人治的な社会体制であったのに対して、市場経済体制を整備するためには、社会のルールを定め、そのルールの範囲内で個人の自由を認めることが必要である。しかしながら、越では1995年にはじめて民法が整備されたところであり、まだその付属法令である民事訴訟法等などは現在検討中である。交通運輸省所管の法律は、航海法のみである。(この他、民間航空総局所管の航空法は制定されている。)目下、基本法典については、関係行政機関で検討し、国会で審査、決議するように進めている。また、そのほか多くの法令は、関係行政機関で検討し、首相決定という形で行政府が制定している。

 

 

 

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