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しかしながら、インドシナ半島の共産主義化を懸念した米は南部にゴー・ディエン・ジェムを大統領とするヴィエトナム共和国の成立を支援した。このため、南北ヴィエトナムで内線が起こり、米・豪・韓が南の政権を支援して参戦し、また、中・ソが北を支援した。1973年に米軍が撤退し1975年4月に北部の政権が勝利を収めるに至り、統一国会選挙を経て、1976年ヴィエトナム社会主義共和国が全国を統治することとなった。

我が国は南北ヴィエトナム分裂時代に南の政権と国交を結び、戦後賠償としてのホーチミン市のチョーライ病院の建設と技術協力、ダニム水力発電所の建設等の経済協力を実施した。統一国家成立後、経済協力を開始したが、1978年に越がカンボジアに侵攻したため、人道的な小規模援助を除いて経済協力は凍結されることとなった。

1976年の統一国家成立後、越政府は急速な共産化を進めたが、経済運営はうまく進まず、農業生産は低下し続けた。特にカンボジア侵攻とその後の中越紛争以後はソ連以外に有力な支援国がなくなったことも重なって、1980年代に食糧不足が深刻化した。この苦境に際して、厳格な共産化ではなくある程度の範囲内で自由な経済活動を認めるドイモイ政策が1986年に打ち出された。1991年にはカンボジア和平に関するパリ協定が締結され、1992年には我が国の経済協力凍結が解除された。また、同年にはドイモイ政策の考え方を取り入れた憲法改正(ドイモイ憲法)が行われ、1995年にASEANに加盟した。

(5) 社会

越は社会主義体制をとっており、ヴィエトナム共産党が政府を指導することとなっている。(別添図参照)このため、政治上の指導者はレー・カー・フュー書記長である。また、チャン・ドゥック・ルオン大統領が政府と軍を掌握し、特に緊急時には政府と軍を統合して国家の指揮をすることとなっている。政府を代表するのがファン・ヴァン・カイ首相である。

国土整備の組織としては、道路、鉄道、港湾、海運、陸運等の交通基盤整備については交通運輸省、都市計画や都市内上・下水、建設業については建設省、地方部(農村)部の開発や治水については農業農村開発省、電力・エネルギー開発に関しては工業省、漁港については水産省が担当している。また、環境と科学技術に関しては科学技術・環境省が担当している。国家予算のうち、投資的字算(社会基盤整備はこれに含まれる。)の審査権限は投資計画省に帰属し、ODAについても同省が担当している。

地方組織としては、各地方に省(プロヴィンス)毎に人民委員会が設置され、各地方の統治をしている。但し、ハノイ、ハイフォン、ダナン、ホーチミンの4市は直轄市と指定されており、省には帰属していない。越では地方人民委員会は大きな権限を握っており、中央省庁の権限はそれほど強くない。中央省庁は各地方人民委員会の関係部局を通じて行政指導はしているものの、各地方の予算等は地方人民委員会が計画投資省に直接要求しており、また、中央省庁が地方の予算執行の状況を正確に把握して管理しているとは言い難い。

 

 

 

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