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そんな中で、いきなりヴィエトナムにがんがんお金をつけてやっても、これではしようがないというふうな、だんだんそういう心境になってきて、やはり、ヴィエトナムの人たちは、非常に向上心が強くて、非常に勉強熱心で真面目ではあるんですね。日本から送ったいろいろな文書なんかも、ちゃんと読んで会議に出てくるし、すごく真面目には仕事をしている。ただ、社会の仕組みが難しいものですから、なかなか日本人が思ったとおりには進まない。

そんな中で、少しでもヴィエトナムのそういう政策形成なんかを手伝ってあげようということで始めたのが、ちょっとこの写真なんですけれども。これは前の書記長のドーモイ書記長でございまして、こちらが一橋大学の石川滋先生、こちらが鈴木大使閣下で、こちらがJICAの所長なんですが、ちなみにこれが私ですけれども。これは、ヴィエトナムの最高権力者であるドーモイ書記長と、この先生が直談判をして、ヴィエトナムの経済政策についてのレポートをまとめてまいりました。これは、私がいる間、95年の6月からずっとやりまして、98年の3月まで続きました。

いろいろなことをこの中でやってきたんですけれども、当初ヴィエトナムが高成長路線を掲げて、年間14〜5%成長したいということを言っておったわけです。あるとき、この石川先生が、ドーモイさん、それはやめなさいと。9%か10%ぐらいにしないと、国がおかしくなりますよということを言ったわけです。そうしたらその書記長が、ぜひ先生の話をヴィエトナム共産党の中央委員会の政治局員に聞かせたいと。

ヴィエトナムの共産党の中で、上から順番の20人というのが政治局員でございます。共産党の世界というのは、上にいくと順位の、ランキングの世界があって、ランキングナンバーワンから20までつけて、これが政治局員ということで、国の最高権力を全部この政治局が握るわけです。その政治局員を全部集めるから、先生が講義してくれということが起こりました。

先生はちょっとお悩みになったんですが、次の日、午前中準備して午後講義をされて、自分の経験と、あと、自分のヴィエトナムについて研究した理論によると、14〜5%にやったときに、経済が破たんするということを示しまして、その後、それから3週間ぐらいしてからですか、私のカウンターパートのある役人が、実は、中央政府から指示が来た、5カ年計画の経済成長目標は下方修正するということで、9.5%にするという決定が出たということだそうで、こういうことが少しは役に立ったのかなと思いました。

それから、そのほかに、なかなかヴィエトナムの一つ一つを、むいているとラッキョウの皮みたいなところがあって、なかなか、インフラさえつくればいいというわけでもないし、じゃ、こういう経済政策支援だけやっていればいいというわけでもないんだろうと思うんですけれども、一つは税金も問題だと。、税金がないから、みんな給料を払えないと思いまして、日本の大蔵省さんにお願いして、国内でさぞかしお忙しかったんだと思うんですけれども、何かヴィエトナムくんだりまでやってきていただいて、こんなセミナーをやってくれました。この写真に写っているこの方が、今は大蔵省の国際局長におなりになっております。

こういうことで、ヴィエトナムの政策づくりをいろいろ支援しようということを一生懸命やってまいりました。それから、法律がないものですから、困ったねと。何しろ朝令朝改といいますか、朝令暮改どころではなくて、いろいろな企業、あるいはJETROさんで、法律の調査もやっていらっしゃるのですが、どんどん変わっていってしまう。しかもその、変わって決まって、しばらくしてから通知が来るんですね。これがまたたまらなくて、今まで通ってきた書類が、ある日突然却下されちゃう。しかも理由は示されない。2カ月ぐらいしてやっとわかったことは、何カ月か前に法律が変わったというんですね。

例えば無償資金協力で上水道の援助をして、消火栓をたくさんあげたんです。そうしたら、あげてからヴィエトナムの法律が変わって、消火栓の規格が変わりましたということになって、全部パーになっちゃったとか、ひどい話がいろいろあって、その法律をもっとちゃんとせいということを言ったら、彼らもよくわかっていて、確かにおつき合いをしてみると、ヴィエトナムの法律をつくっている人たちはものすごく忙しいらしくて、毎月1本法律をつくっているんですね。そこで、ちょっとJICAさんにまたお願いして、法整備支援というのを世界じゅうで初めてやってもらいました。

それから、そのほか、いろいろやってまいりまして、もちろんハードのほうもやってきました。さっき、紹介したような港だとか鉄道、道路、それから電力などをやってきたわけです。運用分野でどうかということなんですが、運用分野もやはり政策をつくってもらわないと困るということで、日本に1回帰国したときに、東京大学の森先生にお願いに行きまして、ハノイに来てもらって、ヴィエトナム政府にセミナーをやっていただいて、はい、しっかり計画をつくりなさいということをやってもらいました。こちらが、皆さんご存じかもしれないけれども、森先生で、こちらがヴィエトナムの交通運輸省のクエ次官、こちらが男竹さん。それで、おかげで、ヴィエトナム政府が一生懸命先生を接待してくれて、こんな楽しい思いもさせてくれたんですけれども、これは船で夕食会をやったときの写真です。

それで、今は、ヴィエトナム政府、ヴィエトナムの全国の総合交通計画のマスタープランをJICAにお願いしたいという要請を上げて、9月に参与したところであります。これから、多分来年年明けてからだと思うんですけれども、本格調査に入っていくと思います。ぜひ、きょうお集まりの会員企業の皆様には、積極的に入札に参加していただいて、ぜひ優秀な人間をヴィエトナムにアロケートしていただきたいというのが、実はきょう私がここに来た一つの目的でございます。

 

 

 

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