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それで、ほんとにBOTでものになってくれれば、まあ、百歩譲って、ヴィエトナムの社会の発展に役に立ったと、それはそれでいいじゃないかと、こう思えるわけなんですが、実際はそうならないやっぱり、投資が集まるわけがないわけです。

それで、どうなったかというと、最後は、ぜひ円借款でお願いしたいと、こう言ってくるわけです。もっとひどいのになると、青い目をしたコンサルの人が来て、しかも、某国の大使から日本の大使閣下に紹介までしてもらって、大使閣下もしようがないから会ってやれということで、会ってあげるわけですね。そうすると、青い目をしたどこかの国の人が来て、我が国はヴィエトナムの社会発展のために役に立とうと思って頑張ってきた、やはりそれでも日本は大事だから、日本と協議してやっていきたいと。ついては、我々が調べてつくったこの案件を、円借款でやってくれと、こうおっしゃるわけですね。

ウーンと思ったんですけれども、まあ、よくよく考えてみると、円借款のコンサルティングサービスの入札をするときは、最初はテクニカルサービスからやるわけです。テクニカルサービスのプロボーザルを見て評価点をつける。そうすると、彼らは先行してやっているわけだから、いい点を取るに決まっているわけですよね。これは、ある種、先行着手だなと。こんなの許したら、日本のコンサルはみんな負けちゃうなと。また、日本は金だけ出してくれということかということで、非常に頭にきた経緯があります。

一体これはどうしたらいいだろうなと思うんですけれども、なかなか彼らもいろいろやってくるものですから、いろいろ調べて手は打ちましたけれども、全部は防ぎきれませんでした。日本の場合は、一応表面上、ジェネラルアンタイドなもんですが、なかなかそういうことがやられちゃうと太刀打ちできないところがあって、それをいかにして何とかうまくやるかというのが、私の任期中の一つの課題だったです。

それから、あと、そういう外国のコンサルがやっていた場合、結構、カウンターパート手当というのを払っているのですね。JICAの場合には、カウンターパート手当を払わない、絶対払わない。私もヴィエトナムにいる間に、少なくとも、覚えているだけでも9件はSW (Scope of Work)の署名に立ち会っているのですけれども、SWの署名をするときに、絶対問題になるのが、カウンターパート手当なんです。毎回同じように問題になります。

ヴィエトナムの場合は、財政事情が苦しいものですから、公務員の給料がずっと上がらないんですね。局長級でも、月70ドルぐらいの給料でしかない。今、大体ハノイで生活していくのに、月100ドルはかかるわけで、それじゃ足らないわけです。私も、これは一体どうしているのか不思議でしようがなかったんですが、要は、副業ができる人は副業をする、それから、忙しくて副業ができない人は、その職場の中でプールした特別のまた会計があって、これをその人にボーナスとしてあげているというのが真相だそうです。

例えば、日本が無償で建てたある病院があるんですが、そこを視察に行ったときに、そのことを、日本人のスタッフがいたんで、聞いてみたら、やっぱりそうですね。看護婦さんの給料というのはどうしてますかと言ったら、一応政府で払っているのは月50ドルだと、それで暮らしていけるんですかと聞いたら、病院がまた独自の会計で50ドル、もう一つ毎月渡しているのだそうでして、だから、看護婦さんたちは毎月100ドルもらっていますということだそうでして、なるほどなと。つまり病院の売り上げたお金というのは、また別にプールして看護婦さんとか医者に配っているらしいんですね。病院の売り上げというのは、全く政府中央には入らないと、こういうふうな仕組みになっているみたいです。そんなことがあって、カウンターパート手当というのが非常に問題になります。

これは具体的にどうなのかというと、これは皆さんのお仕事に若干関係があるかもしれませんけれども、既に経験された方もいらっしゃると思いますが、JICAの調査団としてハノイに乗り込んでくると、まずこの問題にぶち当たるんですね。カウンターパートが金をくれと言ってくるわけです。それで、出さないとどうなるかというと、カウンターパートを外されちゃうんですね。結局、そのほとんどまともなカウンターパートがつかなかったような本格調査団もあります。非常にしんどい思いをして、全然技術移転も進まないで帰ったという調査団もありました。

最初、日本のコンサルタントの能力がないのかなと思っていたんですけれども、要は、結局お金だということがわかりまして、それも、東京にもかけ合ったんですけれども、なかなかうまくいかないし、よくよく考えてみると、確かにヴィエトナムの研究機関とか、そういう調査シンクタンクなんかが、たちの悪いところになると、もうそのカウンターパート手当稼ぎみたいなのがいて、同じような調査案件をいっぱいいろいろな、例えばUNDPとか、ADB、ワールドバンク、それからJICA、あちこちに振って、カウンターパートとしていっぱい稼いで、それで食っているようなのがあるんですね。彼らも生きていかなきゃならないのでしようがないのかなと思うんですけれども、一体、調査の目的が何なのか、それから何が重要な調査なのかということがさっぱりわからなくなってくるというようなことで、そういう点もまた非常に問題になっております。

ヴィエトナムの悪口ばっかり言いたくて来たわけじゃないんですけれども、こういう、なかなか外からは非常にわかりにくいような問題が多々ある。その中で、日本のODAとして、やはり、どういうことをやっていくかということが問題になって、何とかやらなきゃならないわけなので、何とかやってきたわけです。

 

 

 

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