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例えば、どんなことをやったかと申しますとP/Q(Prequalification)、それを改訂前は、必ずしもやらなければならないというような表現ではなかったわけです。ある一定のケースではリコメンダブル、ダブラインの表現だったんですけれども、ほぼやらなければならないというような文言に変えております。それから、入札の方式につきましても、従来のガイドラインでは、価格札と技術札を一緒に入れてもらって、一緒に評価をするという評価方式1本であったわけですけれども、それについて、これは実態でツーエンベロプとか、ツーステージの方式がかなり実態でも行われているということも反映いたしまして、それを反映させて、ツーエンベロプ方式とか、ツーステージ方式、こういった方式についても、ガイドライン上に明記いたしております。

それから、コンサルタントの雇用ガイドラインにつきましては、やっぱりプロジェクトの技術面の、特に調達に当たっての評価を強化するという観点から、コンサルタントの役割が非常に重要であるということで、ただ、従来、円借款の場合、コンサルタントは相手国に雇用されるものですから、とかく相手国が命ずるままに動かざるを得ないというところがあったわけです。いわば立場が弱かったわけですが、これを強化するということで、仮に借入国とコンサルタントが意見が相違した場合、コンサルタントは直接基金に意見が言えるという条項をつけまして、基金としてそういう問題が生じている場合に、コンサルタントから直接公式に─非公式にはこれまでもいっぱいあったわけですけれども、公式にコンサルタントから、借入国側と違う意見も言ってもらえることができるように、そういうような改訂をいたしたわけでございます。

続きまして、アジア支援策についても、重要な話でございますので、若干触れさせていただきたいと思います。

通貨危機はOECFにとりましても大変な激震でございまして、それまでASEANに関しては、OECFは巨額の資金を投入してきまして、順調に開発を軌道に乗せるのに成功してきたというぐあいに思っておりましたので、その中で起こった危機ということで、我々としては自信喪失になる寸前までいったというようなことであったわけでございますけれども、しかも悪いことに、それがODA予算の削減の時期と重なっちゃったので、ほんとうに打つ手もないというようなことであったわけですが、それではいかんということで、我々も、あの通貨危機が発生いたしましてから、いろいろ研究をいたしました。要因分析から、これまでやってきたのはどこがおかしかったのかと。

その辺の我々の思考の過程というのが、この年報の6ページ、年報のまさに冒頭論文に「東アジアの通貨危機を越えて」ということで、一応我々なりの原因分析と今後の対応を書いてございます。後でごらんいただきたいと思いますけれども、我々のアセスメントでは、よく言われることですけれども、やっぱりアジアの通貨危機というのは、非常に従来のメキシコとか中南米の危機の認識とは随分違う。なぜかというと、政府自身は、財政は別にそう悪くはない中で、民間部門のインバランスとか、そういったことで生じたという面があるというようなことですかね。ただ、為替政策、特に金融政策については、確かに政府案に相当弱いところがあった。そういったことを克服していかないと、なかなか日本も今、立ち直りに苦しんでいるわけですけれども、アジアもなかなか立ち直れないだろうというようなアセスメントですね。

今後の、どんな点について特に強化していかなければならないかというところについては、9ページの下以降に書いてあるんですけれども、1つは、今申し上げました金融セクターの問題ですね。それから、次の10ページに書いてありますのは、産業構造、特に輸出産業の構造の改善ということです。特に裾野産業が伸びていないために、輸出額の伸び以上に輸入額が増えているということで、国際収支のバランスが崩れたという面がありますので、そういった点を強化していかないといかんだろう。裾野産業の強化ですね。それから、人材の育成です。これも、経済成長の度合いに比べて、いろいろなヒューマン・インデックスが必ずしもASEAN諸国はよくないんですね。ですから、やっぱりこういったことも危機から立ち直るためには必要じゃないか。それから、投資効率の改善です。これは、タイを例にとっていますけれども、限界資本生産係数、そういったものの推移を見てみますと、確かに最近90年代に入って、投資効率がかなり低下しているなということが受け取れますので、そういったあたりを改善していかないといけない。それからやっぱり、農業開発ですね。インドネシアも食糧危機になっちゃったわけですし、ほかのタイあたりでも、やっぱり相当失業が増加しているんですけれども、それを吸収するためにも、やっぱり農村のほうの開発に力を入れていかなくちゃならないだろうなというようなアセスメントが書いてあるわけでございます。

それで、具体的な円借款に関するオペレーションにどう反映しているかということですけれども、1つは、当然やっぱりこういう危機を反映しまして、分野的に、供与する分野については、今申し上げましたような企業セクターの回復であるとか、裾野産業の育成ですね。ツーステップ・ローンが結構最近増えております。それから、人材育成型の案件も、最近急ピッチに増やしているというような、そういういわゆる融資対象分野を危機対応に変えていく。もちろんその中には、インドネシアで供与しましたような足の早い借款ですね。そういったものを中心にしていくという面もありますし、タイの場合は、必ずしもそういう足の早い借款ということではなくて、むしろ裾野産業の育成とか、人材育成とか、そういったものにシフトしていくというような対応を、今、しているわけでございますが、そういう分野的なシフトですね。

 

 

 

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