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これは一体どんなものが対象になるのかというと、いろいろあるんですけれども、例えば、石炭で発電をします。これはたくさんCO2が出るわけです。しかし、これを天然ガスに転換しますということになりますと、CO2の発生量が3分の1になるわけですね。こういうものです。それを対象にしましょう。それから、自動車に乗りますと、排気ガスがどんどん出るわけです。ところが、これを大量交通システムを導入して、地下鉄であるとか、モノレールであるとか、そういったものを導入して通勤客をそちらのほうに誘導すれば、自家用車が走らない分だけ排気ガスが出なくなりますので、これも温暖化対策に資するということです。そういったものも対象にしようというようなことで、幾つかそれに当たるものを選びまして、そういったものについて、普通のインフラであっても、副次効果として地球温暖化対策に資する。これについては、交通環境案件金利で0.75%というものを適用しようというぐあいになったわけでございます。

これが貸し付け融資条件に関する大きな動きでございます。後で若干言いますが、さらに今年度になりまして、アジア対策の関係で、さらに若干の金利の措置がなされております。

1つ忘れました、そういう特別な分野に対する金利の引き下げだけではなくて、円借款の金利水準全般の見直しも、昨年の10月、日本・ASEAN首脳会議のときに行われております。標準金利0.5%、平均して0.5%引き下げということであります。これと、先ほど申し上げました特別環境案件金利の導入による全般的な引き下げ効果、両方を合わせますと、昨年度1年間で、円借款の金利は平均して0.7%下がったということでございます。

続きまして、調達条件、これも皆さん、ご関心のあるところだと思いますので、そこについてご説明したいと思います。

年次報告書につきましては、18ページをお開きいただきたいと思います。円借款は最近アンタイドである。全くそのとおりでございまして、96年度は、ついにアンタイドが100%になってしまいました、一般アンタイドですね。アンタイドでも2種類、一般アンタイドと部分アンタイドとあるんですが、96年度は、一般アンタイドが100%になったわけでございます。97年度も、依然として一般アンタイドが99%を占めております。ただ、1%だけ部分アンタイドというものが、97年度は出始めております。これは先ほどちょっとご紹介しましたように、特にコンサルタント部門につきまして、ほとんどの案件について0.75%という条件を適用する。これは、裏の目的としては、タイド化というのがまさにあったわけで、それが実際、反映されてきているわけです。ですから、今年度は部分アンタイドの比率がもうちょっと増えていくんじゃないかと考えております。

ただ、いずれにせよ、一般アンタイドが圧倒的であるということでございますが、ちょっとこの年報を離れまして、なぜそうかということを、皆さん誤解があるといけないので、ご説明しておきたいと思います。大きく言って、私の理解では、2つの理由があるわけです。

1つは、我が国として、特に10年前、あるいは20年前に、円借款をまだタイドに近い要件で出していたころに、相当OECD諸国から批判を受けたわけです。要するに、援助を輸出目的に使っていると。そうではないんだということを身をもって示すという観点から、一般アンタイド化に努めてきたということは紛れもない事実でございます。ですから、政策的に一般アンタイド化を進めてきたという面はございます。これは当然、借入国側からは非常に歓迎されたわけです。日本の円借款は、世界の2国間援助の中では最も使いやすい援助である。それは、どこから調達してもいいからである。非常に評判がいいわけです、借入国から。そういうことで、それもありまして、政策的には努めてきたという面があります。

それからもう一つは、一般アンタイド化しなければ、長くかかったという面があるんですね。これはなぜかというと、先ほど申し上げました、OECDの輸出信用ガイドラインの規制でございます。これがどんどん80年代後半から規制が強化されてきまして、今適用されていますのが、92年に導入されました、通称ヘルシンキパッケージと呼んでいる規制ルールでございますけれども、非常に厳しいルールでございました。先ほど申し上げましたように、金利0.75%、償還期間40年というところまで条件をソフトにしないと、そもそも一切タイド化─部分アンタイドも含めてですけれども、タイド化できない、そういうルールになっているわけです。

しかも、それじゃ、金利0.75%、償還期間40年になったら、どんな案件でもタイド化し、あるいは部分アンタイド化していいかというとそうじゃないんです。条件がもう一つありまして、その融資条件がソフトであるということと─ソフトというよりも極端にソフトであるということと、それからもう一つは、プロジェクトが商業性がないことという条件がついているんです。つまり、キャッシュフローがあるプロジェクトはだめだということなんです。ですから、発電所のようなプロジェクトは、いくら条件をソフトにしてもタイド化できないということになっているわけであります。ですから、1つは、批判にこたえる、それで開発途上国が喜ぶ援助をしようという政策的な面、それからもう一つは、OECDの非常に厳しいルールにこたえていくために、アンタイド化を進めざるを得なかったという面があるわけでございます。

その結果として、よく言われますのは、円借款ではほとんど日本企業が受注できていないんじゃないか。受注率が非常に下がっているということが言われます。この答えは、イエス・アンド・ノーであります。それをちょっとご説明をしたいと思います。

 

 

 

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