まず最初の動きとしましては、97年9月に、これは橋本前総理が訪中された際に発表されたものでございますけれども、特別環境案件金利というものが導入されたわけでございます。これは、中国、特に酸性雨等の問題で、中国における環境対策が我が国にとっても死活問題であるということもあって、この訪中の機会をとらまえて発表されたわけでございます。
要すれば、環境案件の中でも、特に地球環境、地球温暖化対策とか、そのほか国際水域の水質の問題とか、そういったものも含みますけれども、そういう地球環境問題対策案件と、もう一つは公害対策ですね。特に我が国は、公害対策については非常に世界に先んじていた経験があるわけですけれども、こういった分野に対する円借款の金利を大幅に譲許的なものにしたわけですね。よくIDA並みの─IDAというのは、世銀のソフトの窓口のことですけれども、IDA並みの条件でとよく言われますけれども、金利を0.75%、それから、返済期間、据え置き10年を含む40年という、非常に譲許的な条件を導入したわけでございます。この条件が導入されるまでは、最もソフトな円借款の条件というのは、いわゆるLLDC、最も貧しい国ですね、これに対する融資条件であります、金利1%、償還期間30年というのが一番ソフトな条件だったんですが、それを大幅に下げまして、金利0.75%、償還期間40年という条件を設定したわけでございます。
その際に、さらに一つつけ加えてとられた措置がありまして、それは何かというと、環境配慮を必要とする円借款案件ですね。これについてのコンサルティングサービスですね。これの金利も、今申し上げたような条件まで下げたわけです。これは、よくそこでこんがらがってしまうんですけれども、環境配慮を必要とする案件というのは、環境案件のことではありません。普通のインフラの案件であっても、およそほとんどのインフラの案件は環境配慮が必要なわけですね。ですから、要すれば、ほとんどの案件について、コンサルタント部分の金利を、今申し上げたようなところまで下げたということであります。
それはどういう目的でやったかというと、2つあります。1つは、これは正面から堂々と国際社会で言える理由なんですが、要すれば、環境配慮を強化するためにはやっぱり、環境問題がプロジェクトの実施の途中で生じていないかどうかについてモニターするために、コンサルタントが必要であると。ところが、開発途上国というのは、とかく、ハードウエアについては、借款の資金を借りることについて、特段異論はないわけですけれども、コンサルティングサービスというソフトウエアについては、金を借りてまでそんなもの要らんということで、我々はよく借款について交渉する際に、コンサルタントを雇用することについて抵抗に遭うわけですね。それではやっぱり、ひいては、コンサルタントが雇用されなくて、それで、環境問題が起こっていても、モニタリングがないので、基金が知らないうちにその問題が大きくなってしまうというようなことがあってはいかんということで、コンサルタントを借り入れ国に雇用しやすくするために、そういう条件を大幅にソフトにしましょうという考え方ですね。これは、ある意味では、表向きの考え方。本気ですけれども、表向きの考え方。
もう一つ、実は隠された目的がありまして、これはコンサルタント部門をタイドにしたかったわけです。ただこれは、ちょっと話せば非常に複雑な話になるんですけれども、平たく言いますと、円借款の調達条件につきましては、OECDの輸出信用部会、ECGと我々は呼んでいますけれども、エキスポート・クレジット・グループですが、そこが設けているガイドラインで規制をされていまして、一定のソフトな条件のものでなければタイド化できないんです。一般アンタイドでないといけないんです。どのくらいの条件かといいますと、金利1%、償還期間30年ではクリアできないんです。クリアするためには0.75%、40年にしないとクリアできないという国際ルールがありまして、これをクリアするために、そういったことで環境配慮を要する案件のコンサルタントという名目を使いまして、この条件を導入したということであります。実はこれを導入しました際に、財政当局と相当熾烈な議論をやったんですけれども、最後は泣き落としで、こうしないとコンサルタント部門がタイドにならないんですということで、何とかのんでもらったというようなことがございます。
続きまして、これで一応特別環境案件金利という新しい制度ができて、一応レールがしかれたわけですけれども、これの対象範囲がさらに拡大されております。これを拡大しましたのは、97年12月の例の京都会議ですね、COP3と呼んでいますけれども、そのときに、我が国として、開発途上国に、特に温暖化対策に積極的になってもらう必要があるという観点から、いわゆる橋本イニシアチブと言われていますけれども、これを表明したわけですけれども、要すれば何をやったかと申しますと、今申し上げました特別環境案件金利、それは9月の段階では、あくまで狭義の環境案件だった。環境を専ら目的としている案件で、その中でも特に地球環境対策に資するものに限って、コンサルタント部門については、そういう非常に狭義の地球環境案件に限って、今申し上げた特別環境案件金利を適用するということだったわけですが、その対象を広げまして、環境案件でない普通のインフラ案件であっても、その副次効果として地球環境対策、特に温暖化対策に資するもの、これについても、特別環境案件金利を適用しようということになったわけでございます。